MasaichiYaguchi

ペテロの帰り道のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ペテロの帰り道(2021年製作の映画)
3.5
コロナ禍による度重なる緊急事態宣言発令や、長引く雨で下を向いてばかりで空を見上げることも少なくなっているこの頃だが、本作を観るとヒロインの水華をはじめとしたキャラクターたちのように抜けるような青空を仰ぎたくなる。
水華は幼い頃に父親を亡くし、通信制の高校生ということもあって友人も少なく、たまに放課後等デイサービスで働く兄の満と会うくらいで、住んでいる建物の屋上に自分の居場所である“秘密基地”で過ごしている。
そんな彼女が自称「神様」の不思議なおじさんと出会ったことから少しずつ変化していく。
このおじさんとの交流で触発されたことで年上の友人が出来たりして、以前よりは世界が少し広がる。
17歳の水華は子どもから大人への過渡期にいて、或る意味、とても不安定。
父親という人生の道標となる存在がおらず、これからどう人生を歩んだら良いかビジョンもない。
そんな時に現れた不思議なおじさんは、恰も彼女の人生をちょっと“軌道修正”する役目を負った存在のようだ。
兄の仕事にも触れることで視野も広がったように感じられる水華だが、彼女に影響を与えた「神様」はいつの間にか風のように去っていく。
最後の最後のシーンで水華の視線の先にあるものに優しさや温もりを感じた。