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ベネデッタのumisodachiのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
3.1
ポール・ヴァーホーヴェン最新作。17世紀に実在した修道女のスキャンダルを描く。

信心深い少女ベネデッタは、幼いころから聖母が見えたりちょっとした奇跡を起こすなど、他とは違う存在だった。修道院に入って18歳になるときには周りからも一目置かれる存在に。そんなある日、父親の虐待から逃げてきた若く貧しい女性バルトロメアが修道院に逃げ込んでくる。ベネデッタは彼女を保護すると主張し、やがて2人は恋愛関係に陥るが……。

修道女同士の同性愛を問われ宗教裁判にかけられたベネデッタ。ヴァーホーヴェンらしく過激な性描写をふんだんに用いて描く生々しい愛と信仰の物語だった……もうね、おなか一杯。

ベネデッタの常軌を逸した信仰心と欲望は、これまた常軌を逸したバランスで両立してしまっている。その一方で、バルトロメアは極めて冷静で人間的なレベルで欲望を抱いており、そういった対比は精緻に描かれている。また、ベネデッタを疑う上司を演じるシャーロット・ランプリングはいつになく感情的で激しく動揺する役どころで、珍しくテンションが高い芝居を見せている。権力闘争やペストの時代の物語でもあり、そういった要素もなかなか面白い。

が、しかーし!Too much!脱げばいい、絡めばいいってもんじゃなーい!

じっとりした瞳で舐めまわすように見つめるとか、興奮して裸になってハアハアいいながら触りあうとか、そういう描写がたくさんあることが悪いわけではない。なんというかなあ……白けちゃうんだよね。女が性的に興奮しているという状態を表す手法のバリエーションのなさというか、もっというと「本当にそんな風になる?」と冷めた目で見てしまうというか。

特に、あるアイテムを引っ張って引っ張ってエロティックに用いるという仕掛けがあるんだけど、ものすごーく作為的で不自然に感じてしまって、ドン引き。終盤のバタバタとした展開と相まって、どよーんとした気分に……。過激ならばいいというものではないと思うの。

ベネデッタを演じたヴィルジニー・エフィラはキム・キャトラルとシャロン・ストーンを合わせたような雰囲気。意志の強さと賢さとちょっとしたヤバさに加えて、ある種の男性っぽさを感じさせて良かった。バルトロメアを演じたダフネ・パタキアも独特の個性があって強く印象に残った。ただ、二人の醸し出す空気があまりにも違っていて、恋愛関係に陥ることにリアリティを感じられなかったのが残念。

日本で公開するかなあ?しなそうだなあ。




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