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ベネデッタのいののレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
5.0

どんなに寝不足で行ってもヴァーホーヴェンの映画なら大丈夫。そんな謎の自信がある。むしろ寝不足のままぶっ込んでった方がいいんじゃないって思うくらい。結果、大正解。イェア!


ったく、ヴァーホーヴェンはなんという映画を創ってるんだ! 妙なのに不思議と説得力がある。17世紀の修道院。つくりだされた世界観はvery重厚。超大作の風貌を持ちながらもド太い中指を突き立ててくれるから嗚呼ってなる。彼女がアナのなかに入れるブツには笑いました、っっったくヴァーホーヴェンったら(って、それも史実?)


映画を観てるときに鳥肌が立ったら、それはわたしにとっては良い映画。終盤ずっと立ちまくった鳥肌が右肩上がりのまま一向に下がらず、ぞくぞくに次ぐぞくぞくで、そのまま凍るか失神か失禁か昇天かそのどれかはわからないけど、とにかく全部をアタシは受け入れた。ベネデッタがシャーロット・ランプリングに耳元で囁いた言葉はなんなのか。わたしはもちろん想像している。


ヴァーホーヴェン少年はWWⅡのさなか、ぐちゃぐちゃになった死体とか、そこらへんに転がってる死体とかいっぱいみてきて、権力やらなんやらそういったものは全くアテにならないと骨の髄まで染み込んだと、どこかで聴いたか読んだか したことがある。
もしかしたらそのなかで彼が唯一信用したのは母なのかもしれない。女性なのかもしれない。権力にこびることなく、そんなことから簡単に超越して、強く賢く生きぬく女性。


わたしは映画のなかで強い女性を観るのが好きだ。迷わない女性。後悔しない女性。ベネデッタは迷いなく自分自身を信じてるところがとてもいい。彼女にとっては、神からの愛と自己愛とは同一なのかもしれない。神の愛もイケメンキリストへの愛も同性愛も自己愛も全てが同一線上にあるのかも。でもそれがどうしたっていうんだ。


ペストが町を襲う様子や、ペスト感染者を町に入れない有り様は、コロナの始まりの頃と重ね合わせた。赤い彗星。




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ベネデッタを演じたヴィルジニー・エフィラとダフネ・パタキアの好演もさることながら、シャーロット・ランプリングとかオリヴィエ・ラブルダンとか脇を固めた方々の 一筋縄ではいかない演技が冴え渡る。ということを、忘れないようにするため記しておく。
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