バーグマンの不安なラブ
2010年7月9日 18時24分
1954年作品、監督ロベルトロッセリーニ。
妻であったイングリットバーグマンを主演に迎えたロッセリーニの「愛の三部作」。
その第三弾になります。「ストロンボリ」(未見)。
「イタリア旅行」では、夫婦の気持ちの揺らぎを表現しています。嫌いを抱えた男女関係。旅行を通じて不仲を引っ張る、マイナスなラブ模様を描いています。
ヌーヴェルヴァーグ最大のボス、今年新作も発表したジャンリュックゴダールの革新作、「勝手にしやがれ」、ゴダールは、「イタリア旅行」をかなり意識したそうです。
確かに男女の旅行という点では、似ています。
そんな第三弾が「不安」です。IVCさんのビデオ鑑賞でした。
なかなかの作品でした。
ロッセリーニの「ラブ」は、なぜにこんなに
「不穏で」
「こそこそ」していて、
もどかしい男女関係ばかりみせるのでしょうか?
撮影当時の夫婦関係って大丈夫だったんだろうか?
とこちらが心配しちゃいます。
ただ言える事は、
普通の「ラブストーリー」ではないっ
ていうことです。
物語は、不倫中のイングリットバーグマン。夫は硬そうな年上、大学の研究者。ある日、不倫中の彼氏の元彼女が、バーグマンに出会います。そこでたかり(金銭要求)がおきてしまいます。旦那には、不倫がばれまいとつくろう。図に乗る女、、。ですが、それにはある秘密がありました。
さて、結末は?
淡々とした夫婦の不和をつづるロッセリーニ。
イングリットバーグマンのたえず、
不安げな表情、
浮かない顔、
うそをついた時の切ないこころの表情が、
バーグマンを通じて見えてきます。
我々は、バーグマンの悩む姿、
嘘の不安を抱えながら、物語をさまよい、うつらうつらドラマは進んできます。
夫の勘ぐり、言動は、我々観客に対して疑いを向けているようです。
浸透した不安なもどかしいイングリットバーグマンへの同情をまるで、問いただしているかのようです。
そしてラスト付近の種あかし、唐突な幕切れ、、。
ロッセリーニの「イタリア旅行」もそうでしたが、幕切れは突然にやってきます。
それは、我々観客が抱いていたバーグマンへの「不安」を断ち切るかのようです。
そして、ますます、気持ちは澱んでいきます。
ラブラブな描写を封印し、夫婦の不和、不仲の中に人間性の「マイナス」なドラマを魅せるロッセリーニ。
わざわざ求愛してやってきたイングリットバーグマンに酷い仕打ちをしているようです。
ハードなハードルを与えてやらせているかのような印象にも見えます。
ロッセリーニ組の時は、一切他の映画の仕事をバーグマンに断らせていたそうです。
そんな愛の三部作最終章、「不安」が横行する、夫婦のマイナスな擦り付け合い。
見えない「嫌い」のやり取り。不安の行方は、どこにいく。
バーグマンの不安なラブの結末とは?
ぜひご覧ください。
追伸「ストロンボリ」も近日レビューいたします。ロッセリーニは、やはりすごい作家です、間違いありません。