イルーナ

明日に向かって笑え!のイルーナのネタバレレビュー・内容・結末

明日に向かって笑え!(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

建国以来デフォルト(債務不履行)9回というデフォルト大国アルゼンチン。
そもそも建国して数年でデフォルトしているのですから筋金入り。
とくに有名なのは2001年7回目のデフォルト。10兆円規模という当時の国際史上世界一の額であり、日本にも飛び火したほど。
しかし当然アルゼンチン国民が一番の被害者で、さらにこの状況に弱者を食い物にする存在がいる。
本作で描かれるのはそんな時代を生きてきた庶民の逆襲劇です。
金融問題がテーマということで、デフォルトの原因になった相場制(1ドル=1ペソの固定相場制)についてはガーっと説明されるので「?」になるかも。
それだけ、アルゼンチンでは誰でも知っている話で身近な危機だったということです。
まあ「騙し取られた」という認識でOKなのですが。
(kkkのk太郎さん、マンシーの手口のわかりやすい説明ありがとうございます!私もあのシーンは爆速すぎてついていくの大変でした)

騙し取られた農協設立の資金の奪還計画。
が、邦題からしてパロディな上に、原題の意味が「お人よし(馬鹿正直)達の長い旅」なのでお察しください。
主人公が元プロサッカー選手で地元のヒーローとして扱われているのは、いかにもサッカー大国ならでは。
息子は防犯装置の仕様を探るため園芸屋としてマンシーの事務所に潜入するが、植物の知識まったくのゼロ。
私自身会社で植物の世話を担当していたので、マジで見てられなかった……
その他のメンバーも全員奇人変人ぞろい。秘境駅の駅長のペロニスタ、地元の有力企業のドラ息子、引っ越しの補助金を散財したダイナマイト漁師などなど。
素人なのでその行動は行き当たりばったりでトラブル続き、作戦も映画にヒントを得たものだったり、とにかくゆるーい。
悪役のマンシーも、(主人公グループの嫌がらせで)あれだけ防犯装置が誤作動を起こしまくっているのに、結局新しくしないというマヌケさだし。

しかしこの作品、せっかくキャラクターが皆面白いのに、その扱いが「?」になる場面が多かった。
まずポスターでは中央にいて、明らかにメインキャラとして描かれていた奥さんが前半で事故死してしまうというまさかの展開。
奥さん結構キャラ立っていたのに……
本来マンシーと同時に裁かれるべき銀行の支店長もいつの間にか死んでるし、秘書の女の子も「もしかしたらこっち側に寝返るのかな?」と思いきや本筋に関わることなく終わるし、意味ありげに登場したショベルカーも結局本番では……
ショベルカー、動かした場面あった?見落とした?ってなってしまった。
そしてラストは無事に農協を設立して、孫も生まれてめでたしめでたし……と思いきや、ドラ息子は更生することなく、取り戻したお金を横領して行方不明になるという、微妙にもやっとする結末。
結局、人は簡単に変われないと言いたかったのでしょうか?
そもそもケイパームービーでは個性豊かな仲間がそれぞれの個性を生かして大活躍という展開になるだろうに、その要素が薄い。

どうにもコメディとして弾けきれてない印象があったのですが、パンフレットにある監督のコメントによると、当初はコメディの予定だったのが人間ドラマ寄りに変更になったらしいです。
やはり自国の金融危機のことは、笑い飛ばすにはあまりにも重すぎたのでしょうか……

追記
kkkのk太郎さんから頂いたコメントによると、ちゃんとショベルカーが使われていたとのこと。節穴でした……
しかし、直接的な描写がないので一度観ただけでは気づきにくい。
ショベルカー、絵的にも映えるだろうに……予定変更の煽りを受けたのか?
イルーナ

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