miu

こちらあみ子のmiuのネタバレレビュー・内容・結末

こちらあみ子(2022年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

私だけに隠されている秘密がたくさんあるみたいで、そのことを誰も教えてはくれなかった。みんな気付かないうちにそれを持っていて置いてけぼりにされている、ただ変わらずにいるだけなのに。まっすぐな眼差しとオレンジ色のTシャツ。私は、コンタクトをつけずにどうやって夕焼けを見上げていたのか、草の匂いも忘れてしまっていた。ぼーっともじっとも見ていられるのに、終わったらなんだかものすごく寂しい気持ちになって泣けてきてしまう。あちらこちらに目や考えが動いて止まらなくなる、ただただあみ子だった。良いも悪いもない、感情の赴くまま生きている。あみ子に惹かれるのはあみ子になれない自分がいるからなんだろうか。
巣が壊れても、卵は割れていないというのがあみ子と家族の関係のようで皮肉だった。明言されていないけれど、障がいについても考えざるを得なかった。大事にしたいものを大事にできなくなるというのは、誰も悪くないからこそ苦しい。コミュニケーションで分かり合うということが、人間にとってこんなに重要なのかと思わされる。それをも超越した存在があみ子に見えて少し眩しかった。どうせわからないからと突き放されて応答のない一方通行の世界でも、手を振って大丈夫と言えるならそれでいいのかもしれない、こちらが勝手に世界を覗いたのだから。頭の中で流れているような青葉市子の音楽もとっても良かった。あみ子がそのままでいられる世界でありますように。
miu

miu