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こちらあみ子のAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

こちらあみ子(2022年製作の映画)
4.6
《雑感をとりあえず》

残酷な事が次々と起こる現実をドキュメンタリー風に描かれる部分と、
本能のままに生き、風変わりなあみ子が彼女独特の視点で観る世界の描写が交差する。

超現実的な演出
重く悲しい出来事が起きる時に敢えてほのぼのとしたピアノの劇伴

確かにそのまま描いたら、ひたすら辛い家庭崩壊もの。重くて深刻なだけで凡庸な作品になってしまうかも。

絵作りも良かったけど、音の演出への拘りが並外れてる。1番最初の水の音から既に。

一見、誰にも怒らずにこにこしているけど、実は1番問題の元になってそうな父親。演じた井浦新の実存感。

家庭崩壊だけでなく、生と死の話。
あの決定的な出来事以降、あみ子は死への不安と、純粋な好奇心が芽生える。
不安はもちろん、あのベランダからの音として。後に鳩の羽音だと示されるけど、あのベランダから飛び出して行ったのは、鳩なのか? あみ子と意思疎通したい妹が鳩として居座っていたのかも。

お化けといえば、お化けなんてないさ♪でモーツァルトとバッハと歴代校長が遊ぶシーンが素晴らしい。
映画的跳躍。センス・オブ・ワンダー。あみ子の死への想像がどこか牧歌的でもあり微笑ましい。

終盤、重い展開になっていく中で、あの坊主頭のクラスメイトの存在が救いだった。思えばずっと彼はあみ子を観察していた。彼の視点だけでみたらこれは又切なく淡い物語ができそう。
「俺の字はこれじゃ。」「お前は一途な奴じゃのう。」
彼にベスト脇役賞をあげたい!!
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