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復讐者たちのsimpsonsのネタバレレビュー・内容・結末

復讐者たち(2020年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「自分にはその資格がある」
プランAもナカムのような組織があったことも知らんかった。
けど観ながら、よくよく考えたら想像したらそらそうなるわ、と思った。
密告されて収容所で地獄の日々を送り、大量の同胞が毎日殺されるのを目の前で見て(1分で2人殺されるってアウシュヴィッツレポートで言ってた)、家族も生き埋めにされて、生きる糧もないし、死ぬのも怖く無いし、ナチスだけじゃなく傍観者だった住民や逃亡者を密告した住民も許せない。
元ナチスたちは戦後も自由に暮らしているのだ。
「アイヒマンを追え」や「コリーニ事件」を見れば分かるように、ドイツ市民の殆どがナチス党員もしくは関係者だったし、戦後ドイツの司法省高官の8割は元ナチスか親衛隊で、裁判で裁かれるのを待てないと言うセリフがあったが、そもそも法によって裁かれるか分からない(実際にコリーニ事件では裁かれなかったのであの様なことになった)
自ら復讐したい、いや、しなければ、と思うのは当然の心の動きだろう。

袋の中に入っていた死神は復讐心だったんだろうなあ
片田珠美さんも攻撃してくる相手に対して、「言い負かすことが目的では無い。勝った負けたが重要ではなく、幸福になることこそが最大の復讐なのだ」と言っていて、なるほどと思っていた。
だから、最後の結論は初め納得したけど、よくよく考えたら分からなくなってきた。
一対一の関係と、民族や国との関係はまた違うのでは無いか(というあくまで現段階での疑問)
それに、奪われたものが大きすぎる
家族なんて唯一無二の存在だろう
その後、生き残ったユダヤ人にとっては苦しみの日々で生きた心地がしなかっただろう(コリーニ事件のように。彼はユダヤ人ではないけれども)
一方生き残ったナチスや傍観者だった市民は何の罪も問われず、恐らく殆どが罪悪感も感じずに生き延びたし、高い地位に就いた者も多い

なぜ?
不公平では無いか?
社会的制裁も問われない

唯一自分を納得させるには、相手と同じ非道なことをする自分では尊厳が保てない、ということくらいかな
でも全て失ったら生きるも死ぬも同然だろ
苦痛でしか無い

それに、自分が幸せになること、生きることが相手への復讐なんだって思いながら生きるのも辛すぎひん?
傷付いた上に誰かが自分の不幸を望んでいること、死ぬことを望んでいることを認めて生き続けなあかんなんて

復讐したい理由の一つに、自分と同じ苦しみを味わってほしい、もしくは同じ痛みを抱えて生きてほしい
という思いがあると思うけど、そういう人達は自分の痛みには敏感だけれど、人の痛みには鈍感だし、自分のしたことは忘れてるか正当化してるかのどちらかで(アウシュヴィッツレポートのナチスが息子を亡くした悲しみをユダヤ人への憎しみへ転換していた)、結局憎しみは憎しみを生むだけだ

解が見えん
と言うわけで結論
やはり、社会が、世界が、裁くべきだった
少なくとも社会的制裁を
あれだけ誰もが認める恐ろしいことをしても何の罪にも問われず自由に生きられるなら、あんな酷いことしても許されるのか、とまた同じことが起きかねない
ユダヤ人以外の人にとっては人ごと、関係ないという考えが根底にあったことのではないか
たった80年前の話だ
正義はどこに存在するのだろう
世界は反省しなければならない
「何の罪もない兄弟姉妹、両親、子供たちが日本人撲滅という理由で惨殺されたならば、あなたならどうするか?」

600万人という数字を聞いて改めて驚愕した
人口(かなりアバウト)
大阪市 300万人
横浜市 400万人
大阪府 900万人
東京都 1400万人

あらゆる人員とコネ使ってよくもここまで集めたなと思うし、国としてある民族撲滅のためにそこまでした憎悪が怖すぎる

密告した隣人が自分の家を奪ってたけど、
結局金持ちへの妬み、嫉妬、ユダヤ人のお金と地位目当てが大きい気がした(ユダヤ人皆が皆金持ちじゃないのに)
迫害したらユダヤ人の財産も地位も代わりに誰かが得られる
そして復讐を恐れて虐殺しようとしたのかも
卑劣すぎて悲しくなる
やってることは強盗殺人と同じなのに、それが大衆の民意なら正当化されるのか?

その上旅団の仲間にまで「収容所でどうして抵抗しなかった?」と責められて
私なら腹立って
一回収容所入ってみろよ!って言ってしまうわ
他にも収容所の映画いっぱい観てたら分かる
どれだけナチスのやり方が巧妙で冷酷か
「希望があれば人は何でもする」
あれもナチスの手口を見てきたからだろう
抵抗するのがどれだけ難しく、例え成功してもどれだけの犠牲を払うか
ナチスによる心理掌握は全て計算し尽くされている
マックスが自分が列車から降りてくるユダヤ人たちを出迎える役で、その時に逃げろと言えば良かったと自分を責めていたが、それもナチスの手口だろう
同じユダヤ人に笑顔で迎えさせ相手を安心させる
そして出迎える方には責任の一端と心に傷を負わせ、自分を一生責め続けさせる

あと、ユダヤ人たちがパレスチナへ向かったのは、そこでもしかしたら家族が生きていて会えるかもしれないという希望があったからかも、とこの映画を観て思った。

never again
never again!!
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