雷電五郎

ナイブズ・アウト:グラス・オニオンの雷電五郎のレビュー・感想・評価

3.8
ダニエル・クレイグ演じるブラン・ブノワ探偵シリーズ2作目です。

やたら格調高い割にちょっと抜けてるところもあるブノワのコミカルさが相変わらず好きでした。解決編から散らばったパズルが一つ一つ正しい場所にハマっていく感覚が気持ちよかったです。

一作目とは違い、登場人物が欲に溺れて剥き出しにする醜さではなく、利害のために不如意な人間関係を強いられるという、これまたキツい描写が出てきます。
助手役とも言える協力者が意思の強い女性という部分は同じで、事件ごとに協力者が変わる構成なのはダニエル・クレイグが演じていた007シリーズのヒロイン役を彷彿とさせますが、勿論恋愛相手ではなく事件の当事者としてブノワの後押しを受けて自らの力で解決への道を切り拓く存在。

作中でブノワが繰り返していたように、探偵はあくまで部外者であり一般人です。物的証拠をつかむために手助けはできても、犯人を逮捕する法的権限は持ち合わせていません。
ナイブズアウトのシリーズでは一貫して探偵が部外者として存在し、万能で便利な存在ではないことを示すのが無情感があって好きでした。

今作ではラストがやや力押しな部分もありますが、最後にヘレンが事件を通してアンディと同じく「金持ち女」のように自信を獲得したことを思わせる視線で終わるのが印象的です。最後まで自分の意志を貫き通したアンディと同化して見えるのがうまいと思います。ただ姉妹だからと言うだけでなく、真実だけが救いになる訳ではないと知り自ら行動し、自ら望む結末を手にした強さを窺わせるのが美しいですね。

マイルズが送った箱の招待状にはちょっとワクワクとしました。
大なり小なり人はハリボテで虚飾した自分自身を守るために、公正に背を向け、醜い嘘を平然とつく。根が善人であろうと得られる利得の大きさに目がくらむと…といった、どこにでもいる人間がとてつもなく嫌な奴に変わってしまった一つの側面を見せるのがうまいなと思いました。

三作目も期待していいんでしょうか。ブノワの活躍をもっと観たいのでNetflixさん、よろしくお願いします!
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