このレビューはネタバレを含みます
アリソン(アビゲイル・ブレスリン)の起こした事件の核心が終盤に明かされるが、それがあり得ない内容で、ガクッときてしまう。
事案はこうだ。レズビアンの相手が疎ましくなってきたので、知り合いの青年にスティルウォーターのお土産品のネックレスをあげて追い出すよう頼んだ。事後に金を上げると約束した。
一方、青年はアリソンの依頼を殺人と捉えた、というものである。
これは疑問符が3つぐらい付く。
まず第一に、なぜこのような事実を裁判で主張しなかったのか?5年経ってから言うぐらいなら最初から言うべきだろう。
第二に、アリソンはフランス語に堪能なのだから、青年がアリソンの依頼内容を取り違えたとは考えずらい。「追い出す」ことと「殺人」とはまるで違う。
第三に青年が殺人の依頼を受けたと考えたとして、前金無しのお土産のブレスレットをもらっただけで承諾するのか?
バカだろう。普通、日本円にして100万円以上前金でもらわなければ受けないだろう。
このように、リアリティーがまるで無い。
そして、再審が認められ、青年が殺人罪になったなら、事実を話して、自分の依頼を取り違えて殺したと証言すれば、青年の刑は軽くなるだろう。
自分だけ無罪になって、青年の人生を考えないのは自分勝手じゃないか。と思わせる。
アリソンもビル(マット・デイモン)も後ろめたいだろう。
さらに、自分の娘を救う話がメインのはずなのに、途中で偶然出くわしたヴィルジニー(カミーユ・コッタン)と娘との話の比重が半分くらいになって何を言いたいのかわからなくなる。
破綻していると言わざるを得ない。
思うに、この構成は、「黒い司法」のように対象者が全くの冤罪の場合に、盛り上がるのであって、このようなグレーの場合には、白けるのは自明の理であろう。脚本家は、なぜそこがわからないのか!