ハル

スティルウォーターのハルのレビュー・感想・評価

スティルウォーター(2021年製作の映画)
4.0
ほぼ事前情報なしの鑑賞だったが完全に惹き込まれた。
最近『ボーンシリーズ』を履修し『最後の決闘裁判』も鑑賞していた為、マット・デイモンありきで興味を抱いたわけだが、作品全体としてみても優れている。
細かなプロット、物語、キャラクターどれも秀逸な出来栄えとなっており、ハラハラドキドキする気持ちが鑑賞後も収まらない。

日本人からみたアメリカ人やフランス人のイメージでは無く、『アメリカ人からみたフランス人』と『フランス人からみたアメリカ人』の感覚が面白く、彼らからするとこういった捉え方なのかぁと勉強にもなった。

そして根幹のビルの人生について。
主人公であり父親のビル(マット・デイモン)は恐らく誰よりも自分自身が信じられない存在なのだなと。
社会とも馴染めず、家族とも馴染めず自分としては精一杯やっているつもりなのにいつも何処か噛み合わない。
どうすれば正解か分からないし、それを教えてくれる存在もいない。
犯人探しをしている時の「誰も力を貸してくれない」とヴィルジニーに怒りをぶつけた時のセリフが全てを物語っていた。

彼はどうしょうもないほどの孤独を一人で抱え、それでも誰かの力になりたいと心から願っているからこそ苦しくなるのだろう。
そういった背景を踏まえた上でビルとアリソンが語る「人生は冷酷だ」という言葉を聴くとひたすらに切なくなる。終盤、様々なことが明らかになっていく中で揺れていくビルの心。
信じたいけど信じられない葛藤は凄惨なまでに痛々しく、何ともやりきれない気持ちにもさせられた。

なお、まだ若いビルがデジタルを殆ど使えず、おばあちゃんがオンラインを使いこなしている冒頭のシーン。
ここは逆転的な皮肉が良く効いており、非常にユーモラスな表現として痛快な名シーン。
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