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黒猫の怨霊のYuki2Invyのレビュー・感想・評価

黒猫の怨霊(1962年製作の映画)
3.8
『黒猫』は、ポォの全作品中でも屈指のポピュラリティを擁してる方の傑作かとは思えて居て、だから映像化だって何度となくされてるってヤツだとも思うのですが如何せん短編なのですよね。今作はまた、コーマン御大のポォ・シリーズの4作目で、満を持して遂にその『黒猫』に挑戦してる…という映画だとは思うのですが、前述のその「問題」に関してはシンプルにオムニバス化という手段で切り抜けている=映画としては短編3作の寄せ合せって建付けになってるヤツなのです。まあ、常套手段かとは思いますケドも。

先に、その3つのどの作品もまずまず以上の出来かとは思ったのですが、しかし中で『黒猫』は2作目で且つ、あの感じのピーター・ローレを主演に起用しているコトもあってかなりコメディチックな印象に仕上がってるのですよ。そのコト自体は、重ねてピーター・ローレが主演であるコトも含めて(少しダケ)原作のイメージとは異なるかな…とも思いましたし、で邦題では『黒猫』が思い切りメインっぽい感じながらも(トリではなく)2作目に持って来られているコトの理由でもあるかな…とも思ったりもします。とは言え、後で書きますが個人的には、この仕上げ方の『黒猫』も実に非常に印象的だったな…とは思ったのですよね。総合的には今作、思ったよりも大幅に楽しみつつ観終われたって感覚で居りますよね。



1.モレラ(23分)
コレは原作未読でしたが、後で調べると(ポォの中でも)ワリと奥行きの在る方の恐怖ばなしかとも思ったのですよね⇒ただし、本映画化ではかなりシンプルに纏められちゃっていて、その意味では(掴みとしてはたぶんOKだとは思えど)ちょいシンプル過ぎるかな…という感覚でも居ります(コレは、観た後で調べる前からもちょっと薄味だな…という感覚では居りましたのですよね)。とは言え重ねて、ホラー・オムニバスの掴みとしてはごく適切な質感・レベル感だったかな~とも思えては居りまして、重ね重ね全然決して悪くはないとゆーのが正直なトコロですね。


2.黒猫(38分)
上で書いたとおり、主演は(ロスコー・アーバックルをも少し老けさせた…みたいな)ピーター・ローレなのですよね⇒なので、もはや必然的にドコかコメディチックな質感に纏まっており。しかし、結局のトコロ彼は「笑えるクズ」ではなくて「笑えない(レベルの)ドクズ」だったのであり、なので結果的にはこのお話って、極めてブラックなコメディ(or それを通り越して寒々しい不条理コメディ・ホラー)にまで為り果ててゆくのですよ。しかし率直に、その部分を表現するピーター・ローレの出来(とゆーかその存在自体のあまり観たコト無いってレベルの薄ら寒さ・酷薄さ)に、個人的には非常に深く観入ってしまったってのが正直なトコロの感覚でして、また正直に超・面白かったですよね(掘り出しモンだと思いました)。今作は『黒猫』ともう一つ『アモンティリャードの酒樽』を組合せてのストーリー化になっていて、ヴィンセント・プライスは実はピーター・ローレに殺られる側(のコミカルなマヌケ)なのですが、彼&ヒロインのジョイス・ジェームソンの終盤のホラー的な感じも含めて、真っ黒にブラックなコメディとしても+純粋にホラーとしても、実に面白かったと断言できますです。今作だけで正直、元は取れたな~とすら思えました。


3.ヴァルデマール氏の病症の真相(24分)
コレまた原作は未読ですが、コレまた中々(ホラーとして)興味深いお話ですね。死にかけの人間に催眠術を掛けて⇒肉体の死後も精神・魂は生かしておく(=生きていると錯覚させておく)とゆーのをやったらどーなるか…その時点で非常なる興味しか沸き上がって来ないじゃあねーですか、と。まあ、その状況設定(がもたらす興味)自体を超えて来る様なモノは、この映像化においては(正直)無かったとも言えるかとは思うのですが、オムニバスの中のイチ短編であれば(その設定の趣きのみでも)十二分に走り切れるとも思うのですね。オーラスのベイジル・ラスボーンの恐れ戦くサマも流石のクオリティだと思いました。コレもまた、個人的には(地味に)非常に好きな作品になりましたよね。
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