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前科者の8637のレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
3.7
社会への不満と前科者なりの正義が、強烈な歪みとなって鳴り続ける。信頼の社会であるが、それが建前ですらなく、犯罪者が再犯することが自明になっているなんて嫌だ。だが人殺しだって全てが故意な訳がなく、社会の悪意に耐えきれなかったのだろう。誰もが誰かの殺人に加担しているのかもしれない。

報酬すらないのに勤勉。阿川はなぜ保護司をしていられるのか。本人の意思関係なしに、必要な人だと思った。彼女の優しさに観ている自分も包まれ、そしてどこか教えを得ているような気分になった。

ドキュメンタリーのように作られた硬派な映画だが、回顧が多いのとラストシーンがダサい。岸善幸監督は「二重生活」「あゝ、荒野」をスターサンズで作っているが、やはりあの配給会社での映画を経た人は伝える事の鋭さが変わってくるのだろうか。
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