福福吉吉

前科者の福福吉吉のレビュー・感想・評価

前科者(2022年製作の映画)
4.0
阿川佳代(有村架純)はコンビニの仕事を掛け持ちながら、犯罪者の更生を助ける保護司の仕事を務めていた。佳代は保護司として元殺人犯の工藤誠(森田剛)を担当することとなり、彼の更生は問題なく進んでいるはずだった。しかし、工藤誠は突然、音信不通になる。そんな中、交番の警察官が銃を奪われ、その銃で殺人事件が連続して発生する。被害者から誠のDNAが採取され、警察から誠は殺人事件の容疑者になる。

ストーリーはテンポよく進んでいき、保護司という仕事の大変さを伝えるとともに、人が更生することの難しさと、職務に不誠実な人間により助けられた命が失われる悲しさが十二分に描かれていました。

テーマは重いですが、主人公の保護司、阿川佳代の明るさと逞しさ、心の強さと弱さが非常に上手く伝わってきて、グイグイとストーリーの中へ引っ張られていきました。保護司の仕事が無報酬なのはおかしいと思いますが、だからこそ彼女の秘めたる思いの強さが観ていて心に突き刺さってきました。保護司だからでなく、彼女だからこそ更生させられる人もいるんじゃないかと思えるほど魅力的なキャラクターでした。惚れてまうやろ!

そして、もう一人の主人公、元殺人犯の工藤誠ですが、彼の過去があまりにも過酷過ぎて観ていて辛かったです。誠は本作中、あまり表立って喜怒哀楽を出すキャラクターでなかったですが、それでも小さな喜び、苦しみや後悔などの心情が上手く伝わってきました。少し老けて疲れたような佇まいが森田剛の演技に合致していました。

但し、現実的なことから言えば、再犯する人間も多々いるので保護司という仕事は報われないことの方が多いと思います。そこはあくまでフィクションとして割り切って本作を観ないとつらいと思います。

個人的に印象に残ったのは、佳代の友人のみどりが変に気を遣わずに佳代と接することのできるキャラクターとして描かれていて良かったと思いました。みどりとの過去など描いて欲しかった気がします(尺が足りないかな)。

前述のとおり、あくまでフィクションとして楽しむ作品ではありますが、保護司という仕事自体は実在するのであり、それを知るきっかけとして魅力的に描かれており、作品として面白かったと思います。

鑑賞日:2022年10月1日
鑑賞方法:Amason Prime Video
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