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ヘルボーイ/ゴールデン・アーミーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.7
 1944年、スコットランド沖で発見された赤い猿のような赤ん坊は、「ヘルボーイ」と名付けられ、ブルーム教授(ジョン・ハート)の養子として大事に育てられていた。1955年ニューメキシコ州のクリスマス、サンタが待ちきれないヘルボーイは起きて待つと教授に告げるが、ブルームはいつものように絵本を読み聞かせる。遥か昔、エルフ族と人間は地球の支配を巡って壮絶な戦いを繰り広げていた。やがてエルフの王は最強の鋼鉄兵団「ゴールデン・アーミー」を生み出すが、そのあまりの戦闘力に心を痛めた王みずからがそれを封印、人間と休戦協定を結ぶ。以来、ゴールデン・アーミー復活の魔力を持つ王冠は3つに分散され、決して1つになることはなかった。ニュージャージー州にある超常現象捜査防衛局“BPRD”に水棲人のエイブ(ダグ・ジョーンズ)、念動発火能力者の最愛の妻リズ(セルマ・ブレア)と待機し、難事件の捜査に当たるヘルボーイだったが徐々に民間人にも気づかれ始め、局長のマニング(ジェフリー・タンバー)は証拠隠滅とマスコミ対策に追われていた。ある夜、マンハッタンのオークション会場が何者かに襲撃される。闇の世界では、ベツムーラ王国のバロル王の息子・ヌアダ王子(ルーク・ゴス)が王宮に戻る。絶滅寸前のエルフ族の末裔でもあるヌアダは、地上の支配者である人間を抹殺しようとしていた。そこで、封印されている不滅の鋼鉄兵団“ゴールデン・アーミー”を復活させるため、3つに分割された王冠を集めていた。

 マイク・ミニョーラの大ヒット・アメコミの映画化『ヘルボーイ』シリーズ第二弾。前作で代父の死を乗り越えたヘルボーイは、妻リズとの間に子供を授かり、父になろうとしている。だがマタニティ・ブルーに悩むヒロインは、ヘルボーイと一定の距離を置こうとする。またヘルボーイ自身も自身が街の英雄視されることに疑問を抱いていることが、物語の推進力となる。前作でFBI局長として登場したトム・マニング(ジェフリー・タンバー)のコメディ・リリーフとしての起用の冴え、ジョン・T・マイヤーズ(ルパート・エヴァンス)に代わる新捜査官として赴任したヨハン・クラウス(ジョン・アレクサンダー)という堅物と自由主義者ヘルボーイとの対立など、前作以上にウェルメイドな味わいが滲む。前作はマーヴェル映画やDCコミック映画の第三極になるような正調アメコミ・ヒーローものだったが、ヌアダ王子(ルーク・ゴス)と妹のヌアダ王女(アンナ・ウォルトン)の血筋にまつわる物語や、堅物なC-3POならぬヨハン・クラウスとのやりとりなど、随所に『スター・ウォーズ』シリーズからの影響が感じられる。また今作ではヘルボーイの盟友エイブ・サピエンの初ロマンスがフィーチャーされている。クライマックスの北アイルランドのナイトランドにあるゼンマイ仕掛けの部屋の造形は、ギレルモ・デル・トロの処女作『クロノス』でガッチリと手に突き刺さったクロノスを真っ先に連想させる。死神の登場に起因するヘルボーイのダークサイド、双子の子供の誕生など続編を匂わせながら、ウェルメイドな物語は薄皮1枚で繋がるヒーローとヴィランの葛藤を照らす。
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