MrFahrenheit

ことの成り行きのMrFahrenheitのレビュー・感想・評価

ことの成り行き(2018年製作の映画)
4.3
スロヴェニア版”Beach Rats”とも言われる本作。面白かった。

非行により更生施設送りになったアンドレイ。施設のリーダー的存在のジェルコと出会い、一緒に非行や犯罪を繰り返すうちに恋心を抱くが、ジェルコに恋心を利用されてしまう…。

確かに鑑賞中Beach Ratsが頭をよぎり重なる部分もあったが、着地点は結構異なった。Beach Ratsでは内面化した同性愛嫌悪と有害な男らしさに縛られ、(例えば母に)救いの手を差し伸べられてもゲイだと自分を受け入れられないフランキーの内面に焦点を当てていたように思う。

本作のアンドレイはジェルコと関わり始めてから、Beach Ratsのフランキーが聖人に見えるほど反社会的に堕ちていく。その様子は同情しがたいものだが、果たしてそれはアンドレイの弱さだけが原因なのか。人の弱さや愚かさは、本人だけでなく社会や環境、周囲の人間にも一因があるのではないか。本作の焦点はそちらに比重が大きいように感じた。

少なくともアンドレイは最後に自分を受け入れようとしたし、救いを求めたが、彼に手を差し出す大人はいなかった。(あえて言えば父だが、独善的な母を牽制する力はなかった)更生施設の職員も助けてはくれない。未成年のアンドレイに逃げ場はない。救いがなさすぎていたたまれない。
ホロリと静かに頬を伝うアンドレイの二粒の涙が忘れられない。