りっく

スケーターガールのりっくのレビュー・感想・評価

スケーターガール(2021年製作の映画)
3.6
https://www.shimacinema.com/2021/06/16/skater-girl/

冒頭で適当な木の板に車輪を付けた簡易的なスケートボードに弟を乗せて学校に送る少女が映し出される。だが、その表情にはスポーツをする喜びはなく、男尊女卑やカースト制がはびこる憂鬱な日常に根付いたものである。そこでは自分が疾走したり制御するような自由は許されていない。誰かに引っ張られただ乗っていることしかできない人生が冒頭で暗示される。

そんな彼女や子どもたちがスケートボードと出会うことで、人間関係や世界への好奇心がどんどん拡がっていくような喜びに、本作は満ち満ちている。板の上に乗ってしまえば、そこでは普段遊べない異なるカーストの子どもたちや、性別の違いを超えて、一緒に楽しむことができる。その純度の高い感情をそのまま引き出すことに成功しているのが本作の勝因だろう。

さらにそれに拍車をかけるかのように、劇中でスケートパークを建設する過程を実際に追ったドキュメンタリー的な映像がフィクションの中に混じり込むことで、嘘偽りのない子どもたちのリアクションや感情の強度を高めている。本作の撮影のために実際に45日で建設され、現在でもインド最大のスケートパークの1つとして、毎日何百人もの地元の子供たちがスケートをしているという事実が圧倒的な真実味を加え、現在進行系の「生きた物語」として未来への奥行きを勝ち取っているのだ。
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