シャチ状球体

フルチトークスのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

フルチトークス(2021年製作の映画)
3.1
ルチオ・フルチが自身の思い出から映画論までを語るドキュメンタリー。本人の発言によると、撮影は1995年。

彼はたまたま最初にジャッロ映画で当たっただけで、ジャンルに関係なく撮影に打ち込み、自身の哲学を脚本に込めていたことが分かる。

自分が特定の批評家に酷評されることを差別と読んだり、「矛盾は想像力だ」と支離滅裂な脚本を正当化したりと、全ての作品は受け手に見られて初めて成立するということをフルチは理解していないようだ。彼は常に"自分がどう考えたか"だけを話し、観客がそれをどう受け取るかには関心がないようだ。肥大化した自我を隠そうともしない。

自身の作品は模倣ではないと言いつつも再現を楽しんでいるという発言をしたり、基本的に自分を正当化するためなら矛盾も気にしないらしい。
アナーキストでかつミソジニー、ルッキズムを内包しているフルチの作風にマッチしていたのが『ザ・サイキック』等のジャッロなのだろう。

『フルチ・トークス』という一つの映画として観れば、フルチが延々と自分語りをしているだけの80分なのでよほどのマニアでなければおすすめしない……。
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