くう

ONODA 一万夜を越えてのくうのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
4.0
太平洋戦争時フィリピン・ルバング島に派遣され、敗戦を知らずに潜伏。1974年ようやく帰国した小野田元陸軍少尉を描いた物語。

小野田さんの存在はもちろん知っていたが「潜伏」について無知過ぎた。もっと早く探せていれば助かる命がたくさんあったのに… 。

上映時間3時間、長い…と思っていたけれど、主人公と一緒に何年も島で生きて来たような疑似体験。あっという間。

ロケーションは素晴らしく、美しい風景の中で起こる地獄のような事件の数々に心が重い。成仏なんてできないよ…誰も。

上に立つ者に「責任を負わせる」際に、すぐに退任を叫ぶのは間違っていると心から思う。

退いてしまっては責任は取れない。最後の命令を聞かなければ動けない者がここにいるのだから。

遠藤雄弥さんから津田寛治さんへの年齢移行、キャスティングした人は素晴らしいなと思う。違和感のなさ、若きから老いまで切ない透明感。

他のユーザーの感想・評価

ぬぷ

ぬぷの感想・評価

4.3
素晴らしかった
遠藤雄弥と津田寛治、良かった

フランス人の監督作品なのですね

3時間の映画、私はあまり長く感じませんでしたが、途中飽きちゃってスマホ見てる人とかいました。
光邪魔だから、辞めて〜
フランス人監督が描く、最後の日本兵の30年。
小野田さんが帰国した時のことは、かすかに覚えているし、だいぶ昔に幾つかのドキュメンタリー番組も観た。
本作を鑑賞しながら「あーそうだった、この人中野学校の出身の間諜だった」と色々思い出してきた。
帝国軍人でありながら、死ぬことを許されず、何年でも潜伏することを命じられた秘密戦のプロ。
キャラクターの特殊な背景が、決断に大きな影響を与えているのは間違い無かろう。
何しろ彼はただ隠れていただけでなく、ずっと現地で戦争を続けていたのだから。
3時間の上映尺は長さは感じるが、決して冗長ではなく、むしろ主人公がジャングルで過ごした遠大な時間を実感できる。
当初四人の仲間がいたのが、時間の経過と共に関係性が変わってくるのが興味深く、二人一役で小野田さんを演じた津田寛治と遠藤雄弥が素晴らしい。
島の豊かな自然と人間の矮小な争いの対比は「シン・レッド・ライン」や塚本版「野火」を彷彿とさせる部分も。
また、いい意味で「日本人監督なら絶対こうは撮らないよな」というショットが多々あり、この辺りは異文化クロスオーバー映画ならでは。
じっくりと描かれた、時代に囚われた男の内面のドラマは、ある種の日本人論でもあり、見応えはたっぷり。
しかし本作といい「MINAMATA 」といい、外国人監督が描く日本と日本人に、これほどの傑作が続くとは。
ブログ記事:
http://noraneko22.blog29.fc2.com/blog-entry-1471.html
結構演技下手な人多い
でも晩年小野田の完成度はマジで高い

話として、
日本の家父長制的側面を間違って描いているような…
特に最初の父親から短刀を渡されるシーン。本来は母親からなのに。帝国主義は家父長制の暴走ではなく、一丸とした暴走であるからこそ、小野田の悲壮感が増すものというもの。

小野田さんの陰謀論者っぷりは笑ってしまった。
でも最初迎えに来た時、周りに兵士がいて、出たら撃たれると思った点は書かないとマジであたおかになっちゃうよー

もっと悩む小野田さんとか、そこら辺を描いて欲しかったなあ(結構評価分かれるところではあるけど)
東映の『ルバング島の奇跡 陸軍中野学校』(74)と本作が被っているのは中野学校ネタだけで、本作は、小野田が戦争が終わってもジャングルから出てこない話が中心。イッセー尾形の教官が、いざとなると責任を回避しようとするのが人間的で面白い。それにしても、あるドキュメンタリー映画で、小野田氏が靖国神社で日の丸を掲げ、軍服姿で行進する姿が捉えられていたが、右翼(日本会議など)に利用されたのか、自主性に基づく行為なのか、監督が小野田氏に意図を尋ねると激高するのが印象的だった。彼にとって、やはり戦争は終わっていなかったのだろうか。
papapanda

papapandaの感想・評価

4.6
ONODA初日鑑賞。私は小野田さんを知らない世代。扱う題材は戦争だが、単なる戦争映画というよりは、戦争を通じて孤独とイデオロギーの狭間でもがく人々の人間ドラマだったように思えた。戦争の場面があっても、それを超越したものを伝えたいという製作者側の思いが伝わってきた。
主演の2人は違和感なく、特に津田寛治の壮絶な演技と佇まいは胸を打つ。脇役もいわゆる有名どころばかりでないが、演技派の俳優が多く、見応えがあった。
日本人が監督だったら見られなかったであろうある意味貴重な映画。最近の日本映画はルックスだけの俄か大根役者が増えて辟易していたが、こんな映画もあるのだと見直した。演技派の俳優が正当に評価されて欲しいし、機会があれば是非2回目を観たいと思っている。
sk

skの感想・評価

3.8
2021-255
切ないと言うかなんというか。。。

『必ず迎えに行く』っていうあまりにも無責任な言葉と、わたしたちには到底わかるはずのない軍人の忠誠心。

小塚と2人できゃっきゃ推測してる様子はなんか青春みたいだったなぁ。

事実は知らないけど、絶対終戦してたこと知ってた、よね?
四畳半

四畳半の感想・評価

4.2
劇場で鑑賞

太平洋戦争末期、フィリピンの孤島に派遣された小野田寛郎は上官から自決は許されぬとある意味呪いのような命令を受けており、終戦後も約30年間孤独な戦争を続けていたという嘘のような本当の話
3時間近くあって不安だったが、彼を語るには3時間でも足りなかった

若い頃の小野田を演じた遠藤雄弥さんがほんと凄くて、訓練時代から少しずつ変化していく小野田を完璧に演じていた
少しずつ減っていく部下を見送る度に死ぬことも出来ずにただ無為にやつれていく小野田がひたすら辛い

一度来た迎えが置いていった新聞やラジオからの情報が信じられなくて部下と一緒に都合よく解釈していくシーンが劇中唯一ほっこりした
カルチャーギャップコメディ味があった
maro

maroの感想・評価

4.0
2021年日本公開映画で面白かった順位:39/212
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

この話、日本人ならみんな知っておいた方がいいと思う。
日本史の授業でも習ったかどうか覚えていないぐらいだけど、他に類を見ないエピソードだ。
終戦したことを知らず、29年間もフィリピンのジャングルで彷徨っていた小野田寛郎。
「そんなことある?」って疑いたくなるけど、これ実話なんだよな。。。
こんな人、歴史上に他にいたのだろうか。
29年って。。。
生まれた子供もアラサーだよ。。。

しかし、当時の状況を考えると、そうならざるを得なかったのかもしれない。
「お国のために戦う」という当時の思想。
上官の命令は絶対という軍隊の環境。
油断したら殺されるという極限状態。
そんな状況において、任務解除の命令が届かなかったら、とりあえず任務を継続するしかないかも。。。

これを今ならみんなどう思うだろう?
忠誠心の高さを褒め称えるか(帰国後はそういう声も大きかったらしい)。
それとも、柔軟性のなさを非難するか。
29年だからね、さすがにおかしいって思わなかったのかなっていう気もする。

小野田さんは一度捜索隊の姿は目にしているんだよね。
しかも、彼らが残したラジオや新聞で、日本の様子は知れたんだ。
ただ、終戦から時間が経っていたからか、すでにその報道はされていなかったんだけど。

結局、「手の込んだ細工」と判断し、戦争は続いているっていう認識のままだった。
ある意味、「人は信じたいものしか信じない」っていうことの表れにも思えたけど。

まあ、それも平和な今だからいくらでも言えるだけかな。
当時のその状況に自分も置かれたら、常にまわりを疑い、正式な命令がない限りは任務を続けたかもわからない。

小野田さんが終戦を知ったとき、涙が出たね。
あのときの津田寛治の泣いている表情に、29年間の長く辛い生活のすべてが詰まっていたと思う。

それにしても驚くのは、29年間も大きなケガや病気もなく、サバイバル生活を続けていたこと。
食事はまあ何とかなるよ。
ジャングルにはいろんな木の実もあるし、畑に忍び込めば作物も家畜もいる。

一方で、医療道具はほとんどない。
幸い小野田さん自身は致命傷になる事態にはならなかったけど、逆によく健康でいられたなって。
衛生的にはよくない状況だったのに。

帰国後は完全にタイムスリップした気分だったろうなー。
1945年と1974年の日本じゃ、まったく違うもんな。
映画では描かれていないけど、小野田さんは日本での生活に馴染めず、帰国した後にブラジルに渡り、牧場を開拓したとか。

享年91歳。
あんな過酷な生活を29年も続けていたにも関わらず、かなり長生きされたようで。
こういう人がいたってこと、忘れてはならないね。
10/11/2021
絶望から救ってくれた谷口さんの教えは小野田さんの考え方や生き方に大きく影響したんだな…これが良かったのか悪かったのか、この出会いがなかったら小野田さんも多くの人と同じようにお国のために命は惜しまない精神で戦っていたのかもしれない。あのとき「死にたくない」っていう小野田さんの心の奥底の思いを谷口さんが掬い上げたことがすべての始まりだったんだきっと…
「迎えに行く」のにだいぶ時間が経ったけど、谷口さんにも押し込めたい戦争への思いが色々とあったんだろう。。

「君たちが君たち自身の司令官」「君たちに死ぬ権利はない」
亡くなった仲間を思いながら、自分が生きるために信じ続けてきたものが崩れていくのを受け入れるってどんなかな〜って思いながら見たら後半目頭が熱くなった。

そして水戸三兄弟よ…最近茨城県がまた魅力度ランキング最下位に返り咲いたのと相まってさ、、しおしおのフルーツとともに発見された3人の姿にああぁあぁぁ…って
壮絶な30年を過ごした記録は
観ていて苦しかったし
痛いシーンが多く辛かったです。
え?そのシーン必要?と思う事も。

ただ
小野田さんの内面描写より
30年の行動にスポットが当てられ
やや物足りなさがありました。

小野田さんと部下が
延々と議論をしているシーン。
アンジャッシュのコント的に
見事な擦れ違い考察の
コメディ感に少しほっこりw

イッセー尾形さん。
戦争当時と30年後が一緒で
そちらも少し残念でした。
もう少し演じ分けて欲しかった…。
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