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ONODA 一万夜を越えてのmaroのレビュー・感想・評価

ONODA 一万夜を越えて(2021年製作の映画)
4.0
2021年日本公開映画で面白かった順位:39/212
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

この話、日本人ならみんな知っておいた方がいいと思う。
日本史の授業でも習ったかどうか覚えていないぐらいだけど、他に類を見ないエピソードだ。
終戦したことを知らず、29年間もフィリピンのジャングルで彷徨っていた小野田寛郎。
「そんなことある?」って疑いたくなるけど、これ実話なんだよな。。。
こんな人、歴史上に他にいたのだろうか。
29年って。。。
生まれた子供もアラサーだよ。。。

しかし、当時の状況を考えると、そうならざるを得なかったのかもしれない。
「お国のために戦う」という当時の思想。
上官の命令は絶対という軍隊の環境。
油断したら殺されるという極限状態。
そんな状況において、任務解除の命令が届かなかったら、とりあえず任務を継続するしかないかも。。。

これを今ならみんなどう思うだろう?
忠誠心の高さを褒め称えるか(帰国後はそういう声も大きかったらしい)。
それとも、柔軟性のなさを非難するか。
29年だからね、さすがにおかしいって思わなかったのかなっていう気もする。

小野田さんは一度捜索隊の姿は目にしているんだよね。
しかも、彼らが残したラジオや新聞で、日本の様子は知れたんだ。
ただ、終戦から時間が経っていたからか、すでにその報道はされていなかったんだけど。

結局、「手の込んだ細工」と判断し、戦争は続いているっていう認識のままだった。
ある意味、「人は信じたいものしか信じない」っていうことの表れにも思えたけど。

まあ、それも平和な今だからいくらでも言えるだけかな。
当時のその状況に自分も置かれたら、常にまわりを疑い、正式な命令がない限りは任務を続けたかもわからない。

小野田さんが終戦を知ったとき、涙が出たね。
あのときの津田寛治の泣いている表情に、29年間の長く辛い生活のすべてが詰まっていたと思う。

それにしても驚くのは、29年間も大きなケガや病気もなく、サバイバル生活を続けていたこと。
食事はまあ何とかなるよ。
ジャングルにはいろんな木の実もあるし、畑に忍び込めば作物も家畜もいる。

一方で、医療道具はほとんどない。
幸い小野田さん自身は致命傷になる事態にはならなかったけど、逆によく健康でいられたなって。
衛生的にはよくない状況だったのに。

帰国後は完全にタイムスリップした気分だったろうなー。
1945年と1974年の日本じゃ、まったく違うもんな。
映画では描かれていないけど、小野田さんは日本での生活に馴染めず、帰国した後にブラジルに渡り、牧場を開拓したとか。

享年91歳。
あんな過酷な生活を29年も続けていたにも関わらず、かなり長生きされたようで。
こういう人がいたってこと、忘れてはならないね。
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