青二歳

白い魔魚の青二歳のネタバレレビュー・内容・結末

白い魔魚(1956年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

舟橋聖一原作の青春映画。かなりもったいぶった流れでいまいち世界観に入れなかったが、落とし所を見るに自由結婚バンザイの青春映画なのか。アプレな若者が世の厳しさにぶちあたるも、真の愛情を選び自立を目指すお話。

新しい価値観として、実家の都合に合わせた結婚は不幸であるかのように貶められ、自由結婚を称える構図になっているのだけれど、上原謙がそこまで悪いやつじゃないんでピンと来ない。上原謙は家業再建をたてに結婚を迫るというより、有馬稲子に岡惚れしちゃってるみたいですし…
有馬稲子と高峰三枝子の静かな女の闘いがチラとあるのだけど、若い女にとっては何のこっちゃという雰囲気が却って険しい空気で面白い。無駄に堂々たる有馬稲子がそのすっトボけ役にピッタリ。大学生同士のキャットファイトもまた面白いんだが、有馬稲子のブレなさがすてき。なのになんだか大人気ない流れになって若い恋人を選ぶというのがなんとも…古臭い。もっとモダンな話になるかと思ったが。

自由結婚が是で、見合いや実家の都合による結婚は非というのは戦前からロマンスものでよく見られるけれど、なんだか今作は却って有馬稲子が古風な女に見えてしまう。
彼女は世間や血縁のしがらみに縛られることなく真実の愛を選択するのだろうか?どうも映画全体に道徳的というか啓発的な匂いが漂っていて、彼女の芯の強さが見えにくい。また彼氏との関係性も深く掘り下げられていないし、感情的な動機が目立つのもあって、大人気ないというか、悪く言えば当てつけで選ぶようにも見えてしまう。

有馬稲子は若いのに風格があり、高峰三枝子と向こう張っても見劣りしないし、キャスティングがよかっただけにテーマが伝わりにくくて残念。
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