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英雄の証明のEDDIEのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.0
意図せぬところで噂の広まる脅威。“英雄か、詐欺師か”のコピーとは裏腹に主人公にはそんな評価は関係ない。SNSの恐ろしさは赤の他人の身勝手な言動。彼自身も悪い所は多分にある。しかし私たちも軽いお節介が人の人生を狂わせる教訓だと知っておきたい。

〈ポイント〉
・ちょっとのきっかけで主人公の身の回りに変化が起こる脚本の妙(盗作疑惑はここでは置いておこう)
・主人公ラヒムを演じたアミール・ジャディディのいかにも人が良さそうな雰囲気は役柄にぴったり
・吃音症の息子までも巻き込まれていく展開が結構きつい
・最初は身の回りの変化に翻弄されていく主人公が徐々に苛立ちを募らせていく模様がリアル

〈雑感〉
やっと観れました!
4月1日公開なので、公開から3週間以上経過。4月1日公開作品が観たい映画が渋滞していた一方、以降の公開作品があまり観たいのがなかったので徐々に消化して今に至ります。

本作の監督は、『別離』『セールスマン』でアカデミー賞外国語映画賞(現・国際長編映画賞)を受賞したアスガー・ファルハディー。
本作については盗作疑惑がありますが、判決は現時点では出ていません。有罪判決の噂も広まっていますが、それはまだ明確ではないとのこと。
なので、今回のレビューでは盗作云々については特に触れずに、映画そのものの出来事や感想を中心に語っていきます。

あらすじにある通り、借金の罪で刑務所入りしているラヒム。
すると婚約者が17枚の金貨を拾うという借金返済の手段が舞い降りるわけですね。

はい、もちろん拾ったものは警察に届けましょうと私たちは子供の頃から教えられているはず。イランではどうかわかりませんが、良心があれば、そのように対処するはず。
しかし、彼は案の定借金があるので、それを返済するために換金を考えるわけですね。

その後ある行動を取るのですが、そこで心変わり。やっぱ落とした人探さなきゃと。
結果的にそれが意図せずして刑務所に知れてしまい、「借金で投獄されてるのに、なんて良い行いをするやつなんだ!」と知れ渡り、さらにSNSでどんどん拡散されていくわけですね。
もうこうなったら後戻りできません。
その前に換金しようとしたことは置いといて、彼が持ち主に返そうとしたことは事実なので誰の目にも善行として映るんですね。
もうこれが全てのはじまり。

その後の行動も踏まえると、ラヒムは決して良い行いばかりをしていたわけではありません。一つでも事実と違うことを言うとか、嘘をついてしまうとか、そんなことで全ての辻褄が合わなくなり、どんどん人生は狂っていくのです。

ただ忘れてはならないのは、悪いのはラヒム自身の欲望から起きた身から出た錆。とはいえ、勝手に持て囃したのは無関係の第三者たちなのです。
Filmarksは映画の感想レビューメインなのでさほど関係はありませんが、Twitterのようなソーシャルメディアの場合は軽い気持ちで発した内容が変に歪曲されて拡散するということは珍しくありません。
このあたりのSNSとの付き合い方について、改めて考えさせられる作品でございました。


もし今後判決次第でファルハディー監督が有罪となった場合…個人的に本作については監督の演出面よりも脚本の見事さを評価しているので、正直判決次第では評価を変えざるを得ない可能性はここに示唆しておきます。

〈キャスト〉
ラヒム・ソルタニ(アミール・ジャディディ)
ファルコンデ(サハル・ゴルデュースト)
バーラム(モーセン・タナバンデ)
ラドミラ婦人(フェレシュテー・サドル・オーファン)
マザニン(サリナ・ファルハーディー)
マリ(マルヤム・シャーダイ)
ホセイン(アリレザ・ジャハンディデ)
シアヴァシュ(サレー・カリマイ)
ナデアリ(エーサン・グダルズィ)
サレヒ(ファッロク・ヌールバクト)
サレプール(モハッマド・アガバディ)

※2022年新作映画63本目
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