ムック829

英雄の証明のムック829のレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
4.0
借金を抱え投獄されているラヒム。休暇でシャバに出ていた日に金貨の入ったバッグを拾い、持ち主に返したことで一躍英雄に。
しかしちょっとした嘘の積み重ねとSNSの影響で、あらぬ疑いをかけられることに。

まずタイトルがいい。「英雄の証明」英雄か、詐欺師か。
しかも「別離」のアスガー・ファルハディ監督ときた。
この監督は各人の台詞や行動から見ている側に状況を把握させるのが抜群に上手いんですよね。
説明しないけどちゃんとわかる。さらに余白も残すのでどう転ぶかわからないという。

今作は文字通りにラヒムが「英雄の証明」を迫られる物語となっていますが、これが面白い。
正直彼が「英雄」だとは思いませんが、こちとら全部見えているから「悪人」ではないということも分かっている。
それでいて完全には感情移入しきれない展開に心が揺さぶられるんですよね。

BGMはほとんど使わず、生活音をBGM代わりにしているのもいい。
別離にも出ていた娘が今作でも出ていますが、芯の強そうな顔が役柄にピッタリでちょっとムカついた笑。

ラストシーンの対比ははなかなか辛いけど、装い新たな彼の風貌が全てを物語っています。
少なくとも愛する人たちには英雄の証明を果たせたのかな。
日頃の行いって大事だなと思わされる映画でした。
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