ノラネコの呑んで観るシネマ

レッド・ロケットのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

レッド・ロケット(2021年製作の映画)
4.6
ポルノ界の自称スター男優が、落ちぶれてホームレスになり、テキサスに住む別居中の妻の元に転がり込む。
ショーン・ベイカーの映画の主人公は、いつも人生どん詰まりにいて、必死に抗っている。
本作の主人公も金がないが、頼った妻の家も貧乏なのは同じ。
ポルノ一筋20年のキャリアでは、一般社会に仕事は見つからず、大麻の密売で細々稼ぐ。
そんな男の閉塞した人生が、17歳の少女との出会いで動き出す。
本作の主人公は、とにかく自分のことしか考えない。
頼るだけ頼って、ヤバくなったら逃げ出すクズ野郎なんだけど、どこか憎めない人たらし。
色々ひどいのだが、やってることが全部滑稽で、ワルになりきれないんだな。
感情移入は出来ないけど、主人公だけで無く周りの人たち皆に、落とし所が見つかって欲しいと思わせる。
舞台はプアホワイトの街で、時代はトランプ政権誕生前夜の2016年。
アメリカが進むべき道を見失って、分断された年を背景に、人生の岐路に迷った愛すべきダメ人間たちの、悲喜こもごもの狂想曲。
ある意味、「フロリダ・プロジェクト」の精神的な続編とも言える。
かなり好きな映画。
ブログ記事:
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