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ニトラム/NITRAMのyukiのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
5.0
3/31 ニトラム 5.0
休暇最終日に、なんで、こんな重い、苦しくなる作品を観に行ってしまったのかー
でも、抗い切れない力作だった。
公開規模が小さいのが惜しい‼️

今更ながら、加害者に共感や同情する必要もなければ、理解、許容してあげなければいけないわけでもない。
ただただ、他人事にはできない問題提起の根が深く深く下りてくる。
だから今作のレビューも悶絶した。
(3月末に鑑賞して2ヶ月後にレビューだもの)
Followingとらキチさんのレビューに、私も書き上げようと奮起させられました。
とらキチさん、energyをくれてありがとうございました🙇‍♀️✨

今作で想起したのは“八つ墓村”
壮絶なまでの疎外感、孤立。
孤独を痛感するには、決して高い知能は必要ない。
(本作のモデルになったマーティンのIQは66)

知的障害の定義は、IQ70未満で社会性に障害があることとなっている。
でも「社会」て❓🤔
社会と呼ばれる小さなサークルがあって、そこから弾き飛ばされた人は社会の外で生きていくしかないのでしょうか。
その人に合ったアプローチを習得できる、
どんなタイプの人でも入れる大きな宇宙ー
それが「社会」ではないのでしょうか。

なにより彼に与えられるべきでなかったのは
“車”であり、“銃”であり…
彼は誰かを攻撃することを本当に“希望”していたでしょうか。
(かけがえのないヘレンの末路に象徴されているような…)
簡単に彼が“銃”を買えるシーン以上に、“銃”に夢中になるシーンに震撼しながら、あまりの孤独に私は涙しました。

今作のパンフは読み応えがあり、町田康氏によるコラムが秀逸だった。
“鈍くさい”人に対する、憐れみと恐れ。それが“社会”を小さなサークルにしてしまう。

“鈍くさい”と思われているだろうな…と思うことの少なくない私自身。
社会に受け容れられる機会、親切で聡明な方々によるフォローがなければ、立ち上がれもしないサーフボードを持て余しながら、社会の波に打ちのめされていたかもしれない。
※親切で聡明な方々には、勿論、Filmarksで繋がりを持てた皆様も大いに含めています✨

タイトルの“ニトラム”には、“うすのろ”との侮蔑もあり、マーティン本人は呼ばれることを嫌ったとあった。
そして作中、誰一人として彼をマーティンと呼ぶ人はいなかった。両親でさえも。
それが我が子に対する距離を表現していた。
「何かしなくちゃ」と繰り返す母親も、具体的な提示はできない。
もしくはネタが尽きたのか。諦めたのか。
あの母が悪い、と書いているレビューも見たが、専門家でもなく、愛情があったとしてもそれだけでは乗り越えられない問題もある、と観ていて感じた。

監督と脚本家は断罪でも救済でもなく、愛を以って今作を製作された。
だから銃乱射のシーンはない。
トラウマは勿論のこと、一部の誰かに対するカタルシスも与えたくなかったからと思う。

最後に脚本家の言葉を引用しようとしてやめました。
代わりに皆さんに感謝の言葉を捧げたい✨
不定期ログインで、お礼のコメントすら遅れがちで、でも、こんな私とも繋がってくれてありがとう✨
こころより感謝、申し上げます。

【余談】
先日、ある男の子に、久し振りに会う機会があった。
会話どころか、目を合わすことすらなかった彼が、私の手を握って揺り、ご飯のお代わりを頼んでくれた。
“どうぞ”と差し出したとき、おたがい笑顔で目が合った。
彼はまだ15歳の少年だ。
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