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ニトラム/NITRAMのモカのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
4.0
銃乱射によって25人が亡くなったオーストラリア・タスマニア島の「ポートアーサー事件」。
恥ずかしながら、自分はニュースで報じられた程度にしか存じ上げません。

親族を亡くされた方々が大勢いらっしゃる事件であり、かつオーストラリアには死刑制度が存在しないため、犯人であるマーティン本人(ニトラム)はまだ存命しているであろうに、正直よくこんなデリケートな問題に着手したなあという印象。しかもドキュメンタリーではなく、敢えての犯人視点。

マーティンを演じた主演のケイレブが“ヤベエ奴”を絶妙に体現し、こんなヤベエ奴でも簡単に銃が買えてしまうという恐ろしさ。彼によって艱難辛苦する近親者らの描写も、観ていて居たたまれなくなるほど見事です。
映画としてのバイアスは勿論ゼロではないものの、単純に作品としての完成度は高く感じられました。

ジャスティン・カーゼル監督作品というと個人的にはあまりピンと来るモノがないのですが、この作品は自国の悲惨な事件を通して銃規制問題に向き合いたいという、監督のネイティブな思想がびしびし伝わってきます。そこがたまらなく好き。

ただ、もう一度観賞(鑑賞?)したいかと聞かれれば、個人的には微妙なところ。
必要な問題に世間の目を向けさせるという意味で世に益する作品なのは確かですが、そんな何度も繰り返し鑑たいとも思えない……一度で十分かな。
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