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ニトラム/NITRAMのKUBOのレビュー・感想・評価

ニトラム/NITRAM(2021年製作の映画)
3.6
1996年 タスマニアのポート・アーサーで起きた銃乱射事件を、その犯人を主人公として映画化した作品。

主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズがカンヌで主演男優賞を受賞したことは頷けるが、あまりにも救いがなくて見るのも辛くなった。

ニトラムと呼ばれる主人公は明らかに発達障害。だが母親はそれを認めたくないのか、事ある毎に「恥をかかせないで」といつも叱られている。

それでも、理解のある父親や、慈母のように接してくれるヘレンなど味方もいたのだが、5歳児程度の情緒で生きるニトラムは、周りの人を不幸にしていく。

ニトラム自身はしたいことをしてるだけ。愛してくれた人の死すら理解できない。

破滅に向かう終盤は、嫌な予感しかせず、途中で見るのをやめようかとも思ったが、惨劇は粛々と実行されていく。

この事件を受けて、オーストラリアでは銃規制法案ができたというが、作品内で、ライセンスも持たない発達障害の男に、いとも簡単に殺傷能力の高い銃器が売られていくのを見て驚きを隠せなかった。

対岸のことと思っていた銃による事件が、最近日本でも起きたばかり。銃など簡単に手に入らない世の中なら、ニトラムも暴れて殴られる程度ですんだかもしれない。

辛過ぎる作品ではあるけれど、重要な問題提起を含んだ作品ではある。
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