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インフル病みのペトロフ家のgreat兄やんのレビュー・感想・評価

インフル病みのペトロフ家(2021年製作の映画)
3.5
【一言で言うと】
「“過去”に魘されて」

[あらすじ]
2004年のロシア、エカテリンブルク。自動車整備工のペトロフは高熱を出し、車の運転すらままならずトロリーバスに乗り込む。高熱のせいかそこはまるで狂った別世界のようで、彼は妄想と現実の間を行ったり来たりする。一方、図書館で働くペトロフの元妻のペトロワは図書館の客たちにうんざりし、家では息子が熱を出して寝込んでいた...。

なんやねんこれ(^_^;)...という困惑が146分間襲ってきた笑。“難解”と言えば聞こえは良いだろうけど、今作に至ってはそれを越えて終始意味不明でしたね😅

ただその意味不明さがクセになるというか、見応えとしてはかなり強烈かつ幻想的でそこまで退屈はしなかったです。
それでも意味不明なのは変わりないけどね(^◇^;)...まぁ自分含めこういう一風変わった映画が好きな人にはかなりオススメかもしれません😌

ストーリーとしては主人公ペトロフがインフルエンザに魘(うな)されて夢と現実を行ったり来たりする…というのがざっくりとした内容だが、とにかく“現実”から“非現実”に切り替わる“瞬間”というのがメチャクチャ巧い。というか違和感無さすぎてただただビックリした😳
一体どうやって撮ってんだアレ...

それにコロナウイルスが真っ盛りの2021年に制作しているにも関わらずあえてインフルで描こうとするのがスッゲェ攻めてんな…って感じましたね(^^;;
それにしても終始フラついて咳きこむペトロフが余りにも辛そうで観ているこっちもなんだか気分悪くなってきた笑

それから全体的な雰囲気や上級者階級を射殺するなどのブラックユーモア含め、それらを全部“妄想”という遠回しな表現で描写したのもロシア全体としての“皮肉”とも取れますし、何なら“悪夢”というオブラートで包まなきゃあの国の“現実”が伝えられないという“嘆き”すらをも感じてしまう。

制作当時ロシアで自宅軟禁状態だった監督ですが、執行期間中に今作を撮ったというこのバイタリティ...法廷と映画制作を行き来して尚且つここまでパワー溢れる映画を創り上げたセレブレンニコフ監督、マジでスゲェ(゚o゚;;...

とにかく夢と現実の境目がない演出に終始混乱する、まさに熱が出た時に見る悪夢を具現化したような一本でした。

正直ストーリーは最後まで理解できないものの、どういうわけか最後まで飽きる事は無かったですし、どうでもいいシーンの伏線をちゃっかり回収する律儀さにもどういうわけか感動してしまう始末(^^;)

ロシアに蔓延る”病巣“をインフルの時に見る悪夢と置き換えた表現といい、色々好きな映画ではあるんだけどね...でも意味不明以外の特別な感情が出てこなかったため、このスコアです。悪しからず笑