りょう

MEMORIA メモリアのりょうのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
4.0
 アピチャッポン・ウィーラセタクン監督は、パルムドールの受賞歴もあるのに、この作品が初めてでした。なんとなく無機質なポスタービジュアルにティルダ・スウィントンの顔立ちが妙にマッチしていて興味がありました。
 冒頭の映像は静止画を観ているように感じていると…唐突な爆発音でハッとさせられます。自動車の防犯ブザーのイメージ映像のようなシーンも示唆的です。序盤でかなり難解な作品だと推測できますが、そこから通常の作品では不自然なまでの長回しがつづきます。ほとんど退屈でしかないシーンの連続ですが、とにかく映像と音響が丁寧なので、不思議と睡魔に襲われることがありませんでした。
 ふと気付くと、ジェシカの記憶と周囲の人たちの言動がくい違っています。何気なく感じていましたが、少し時間軸が歪んでいるのか、彼女の精神構造の問題なのか、はっきりとした描写はありません。
 後半に登場する男性が前半で爆発音を再現してくれる音響技師と同名エルナンです。そこにヒントがあることも強調されないまま展開するので、終盤のシーンには困惑します。エルナンが何者なのか、彼自身の言葉にヒントがあったと思いますが、あくまで解釈であって確信することはできませんでした。
 ただ、SF的な要素があったので、前半の矛盾などもあり得るものと納得できるところはよかったです。これを精神世界だけで解釈しようとしても凡人には無理でした。前半のいくつかの意味深なシーンと終盤の展開とのつながりは、もう1回観ないとわかりません。
 “音”をモチーフにした物語なので、劇伴が一切排除されています。こういう環境音を大切にした作品も貴重なんだと実感しました。不気味ながら妙に穏やかで心地いい映像なので、やっぱり寝不足だとダメだと思います。
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