3人の男女の視点で描く恋愛群像劇。それぞれが心や人生に悩みを抱え、交わりながらも今後の道筋に自分なりに折り合いをつけていく。“愛”とは実に難解だ。互いに“好き”という感情があっても“=愛”なのか。視点を変えながら粋な編集で作品に没入させられた。
〈ポイント〉
・3人の男女の複雑な感情の動きを巧みに見せる演出と脚本の素晴らしさ
・モノクロで魅せるパリの建物の荘厳さ
・ノラ役ノエミ・メルランの美しさが圧巻
・カミーユ役のマキタ・サンバの説得力あるセクシーさが良い
・1人コミュ障半端ないエミリー役のルーシー・チャンもお見事、3人の主演俳優の演技のアンサンブル
・とにかく裸のシーンとセックスシーンが多い(誰かと一緒に観に行く人は気をつけて)
〈雑感〉
いやぁ自分の想像以上に良かったです。
正直周りの評判が良いからということで、観る前は“not for me”だろうなぁと思ってたんですよ。
人間ドラマが秀逸すぎる…!!
フランス映画というのもあり、雰囲気重視だと勝手に決めつけてました。
これ各主要キャラ3人のセリフや経験の積み重ねとそれを綿密に回収していく丁寧な脚本に唸らされましたよ。
3人にくわえ、アンバー・スウィートという女性のこの4人がメインパーソンになってくるのですが、彼らの人間関係の積み上げや交錯などがきちんと活きていくんですよね。
こんなにスクリーンに釘付けになって4人の今後が気になって仕方ない…という没入感は久しぶりだったかも。
今年ベスト級に満足度の高い『コーダ あいのうた』や『ブルー・バイユー』に匹敵する個人的な満足度と完成度の高さ。
ひとつ、カミーユが涙するシーンがあるんですが、あそこはたまりませんでした。
あのシーンの前に大きな出来事があっただけに、それでも平静を装っている彼の姿にこちらが冷静になれなかったのですが、その直後の彼の反応…いやぁ抜群の演技でした。
あのアイテムもかなり前半に出てきたものだったので、それを後半に活かしてくるあたりが絶妙だなと。
上半期ベスト10入りは堅いです。
〈キャスト〉
エミリー(ルーシー・チャン)
カミーユ(マキタ・サンバ)
ノラ(ノエミ・メルラン)
アンバー・スウィート(ジェニー・ベス)
エポニーヌ(カミーユ・レオン=フュシアン)
ステファニー(オセアーヌ・カイラティ)
レイラ(アナイド・ロザム)
カミーユの父(ポル・ホワイト)
エミリーの姉(ジュヌビエーブ・ドアング)
※2022年新作映画68本目