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パリ13区のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

パリ13区(2021年製作の映画)
3.5
昨年観た「燃ゆる女の肖像」がたいへん素晴らしく印象深かったので、その監督が共同脚本を務めたという本作にも俄然興味が湧いてきたところです。

ざっくり言えば「3人の男女がくっついたり離れたりしてるところへ特異な経緯でもうひとりが加わり、家族との繋がりもあいまって思いもよらぬ方向へと物語が転がっていく」みたいな話なんですけども、展開にも映像にも余白が多くてとても良いです。登場人物がやたらと享楽的だったり性に奔放だったりスマホやタブレットの画面がチカチカ眩しかったりするんですけど、ほぼ全編*1モノクロ映像で描かれているためそれら全てに淡いベールを被せられているかのような、ある種の美しささえ感じました。これ、ふつうにカラーで撮影されてたら、きっとほとんどの画がどぎつくごちゃついて収拾つかなかったんじゃなかろうか。猥雑にして静謐でスリリング、抑制の効いた映像と先の読めない展開に魅入られっぱなしでした。メインキャストの誰にも感情移入できないおかげで、物語が動き出すたび「へええええ!」と驚きをもって観続けられたのもよかった。本作まわりのスタッフ&演者さんの動向はこれからも追い続けたいと思わされる佳作でした。

*1:ほんの一瞬、ポルノチャットの画面だけが毒々しいほどのカラー映像で描かれているのがまたとりわけ印象的です
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