なお

わたしは最悪。のなおのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.5
"人生の岐路"

ひとり真夏の川崎映画祭の4本目。
デンマーク出身で、現在はノルウェーを主な活動の場としているヨアキム・トリアー監督最新作。

2006年公開『リプライズ』、2011年公開『オスロ、8月31日』に続く、オスロを舞台とする一連の映画シリーズ「オスロ3部作」の3作目という位置づけでもある。
しかしながら、前2作とのストーリー上の繋がりはない。

ちなみに原題はノルウェー語で「Verdens verste menneske」、英語では「THE WORST PERSON IN THE WORLD」。
直訳すると「世界最悪の人」となるが、邦題と比べるとだいぶズレのある印象。

✏️何者
「30歳という人生の節目(岐路)」に立たされたある女性の葛藤を描く。
本年1月に自分もレビュー済みの、アンドリュー・ガーフィールド主演『tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!』にもよく似たテーマである。

30歳。
これはあくまで持論だが、この30歳という年齢は「何かを新しく始めるにも遅く」「何かを止めるにも遅い」というジレンマに満ちた頃合いであると思っている。

元医大生であり成績は極めて優秀、一方で文才や写真家としての芸術的なセンスもあるユリヤは、もうすぐ30歳の誕生日を迎える。
そんなユリヤの彼氏は、年齢が一回り上のアクセルというグラフィックノベル作家で、独特な感性で描かれる彼の作品は次第にではあるが世間からの評価を受けつつある。

これだけ聞くとなんの不自由もない人生を送れているように見えるが、彼女は彼女なりに数々のジレンマを抱えている。
自分が本当にやりたい仕事は何なのか。
身を固めたがるアクセルに対する不満。
とあるパーティーで知り合った若い男性・アイヴィンとの不浄(ユリヤとアイヴィンにとって、そうではなかったが…)な恋。

何をしたいのか分からないし、母にも妻にもなりたくない・そうなる自信がないし、かといって年齢を考えると何もせずボーっとしているわけにもいかない。
一種の焦りを覚えつつも、一時の快楽に溺れたり現実逃避とも言える行動に走るユリヤの精神状態。
人によっては共感できること間違いなしだろう。

しかし、自分は今一つこのユリヤの気持ちに乗っかることができず。
この日4本目の鑑賞ということで若干集中力を欠いたのと、苦手な恋愛映画というジャンルが仇になったかな…

☑️まとめ
そういえば自分の祖父母や両親が30歳の頃って、もう既に子どもがいてその子どもを養っていたんだよな…
本作のとあるワンシーンを見て、そんなことをふっと考えてしまった。

「20代のうちに結婚して、子どもがいる」
そんな紋切り型とも呼べる「幸せの形」はどの国にも、どの時代にも脈々と受け継がれてきた。

しかし日々の暮らしや制度が便利になって、幸せの形は変化しつつある。
自分は結婚はおろかパートナーすらいないし、今のところ結婚するつもりは一切ない。
だからといって不幸せか?と自問すればそんなことはなく、ある意味で「家庭的な責任」というものがない自由な人生を謳歌できていると思う。

幸せの形ってなんだろう。
哲学的なテーマに想いを馳せたくなる作品ではあった。

🎬2022年鑑賞数:82(34)
※カッコ内は劇場鑑賞数
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