イトウモ

わたしは最悪。のイトウモのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
2.0
キャリアに、恋愛に、結婚に、老、病、死…。ライフスタイル雑誌のコラムみたいな脚本に、CMディレクターが作ったかのような広告的な映像(カットが多い割に情報が少ない)に辟易。近年ワースト級の映像だった。

要は、女ウディ・アレンなのだ。
私小説風の脚本映画。それに、そうだとしてもジュリーデルピーやミアハンセンラヴのほうに一日の長があり、物足りない。

ただ終盤、魅力的なシークエンスがあった。
主役のユリヤの歳上の彼氏アクセルは下品な野良猫が主役の風刺漫画を描いていて、ユリヤからすれば「女性差別的な表現」なのだが、アクセルは「ブルジョワ社会への批判」のつもりらしい。

子どもがほしくない、という理由でアクセルと別れたユリヤが見るのはアクセルが描いた野良猫がユリヤの赤ん坊をホットドッグにして食べる悪夢だ。つまり、アクセルではなくユリヤの内側に、この医学部を中退してよくわからないボヘミアンコミュニティに流れ込んだ優等生の内側に、その社会不適合な野良猫というのがいて、まあ、その元凶には彼女のダメな父親がいるのだが、、

ラジオ番組で女性パーソナリティから漫画の表現が差別的だと非難されたアクセルは「アートは自由で下品なものだ」と言い返し、それから「たとえば、私がこの場面を漫画に描くとしましょう、その場合、あなたは「娼婦」という役で、私は「自分に自信のない男」の役になる。ただ、それは作家である私の意見とはまったく関係がないんです」
というところで泣いた。

パーソナリティが「今、私のことを娼婦と言ったんですか? せめてセックスワーカーという言い方にしてください」と答えたところで爆笑した。