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わたしは最悪。の8637のレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
3.9
多くのテーマを詰め込んだ作品。それこそが人生。映画でなら人生を誇張して表現できる。
誰もが自分の存在を主観的に"最悪"だと思ってしまう事、分かる。別れだとか新たな探究だとかは、自分を"最悪"だと思って割り切った故の決断かもしれない。
しかし、わたしたちが生きていられる理由は、"最悪"じゃない所にあるはずじゃないのか?
持続可能な愛とほどほどの文化さえあれば、ヤバいブツなんてなくても"最高"は続く。

知識を入れれば入れるほど人生は窮屈になる。信じるべき拠りどころが増えて、バイアスが掛かってしまうからだ。
世界の為を思ってこんなに努力していても、無力感に苛まれるだけだと思ってしまう。環境問題から目を背け、そこへの救いを"捨てる"ような展開を映画でやってしまった事に驚いた。

彼との関係性なんて、容易な言葉の定義で変えられてしまう。心変りは悪い事じゃない。しかし、色々な物事を体感して、失敗しまくって、周りに迷惑もかけまくった末に出た答えが「それでも、人生は面白い」みたいなものだとしたら、彼女とかけ離れた我ら"客観"は彼女を許せるのだろうか。

序章のテンポ感で傑作の兆しが見えていたが、主題でもある恋愛観に惹かれずに終わった。映像で遊ぶシークエンスがもっと欲しかった。
恋愛の最も汚い部分を描かない上品な映画だなと思っていて、それが違和感でもあったが、7章を過ぎたあたりからは下品すらも上品に描き始めていた。そこからが好きだ。
初めの彼氏のあたりでは自己満足の言葉ばっかりで退屈で眠くなってしまったが、次の彼氏にはまず出会いから引き込まれた。観ている自分にも相手への好みがあったのだろう。


恋愛映画に登場するひとびとは、前提として誰かと付き合うところまでいっている。まずそれが現実ではいかに稀有か。
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