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わたしは最悪。のikumatsuのレビュー・感想・評価

わたしは最悪。(2021年製作の映画)
4.2
別れ際のアンバランスな会話。側だけセーフと握り合った浮気。ちっとも満たされない顔した女性が欲望のままに生きている。満ち足りては足りなくなっての繰り返し。年ごと、いや極端に言えば秒ごとにそんなものが繰り返す。

キッチンのスイッチを押した瞬間、駆け出した心はきっと誰もが経験のある恋の始まりそのものだよね。美しい景色に出会った瞬間や、芯まで震える音楽に溺れた瞬間ももちろんだけど、視界がクリアになる瞬間はいつも日常のふとした動作だったりもするんだよなと思い出す。

別れた恋人アクセルから「僕が後悔することがあったのなら、君に自信を持たせてやれなかったこと」「生涯の恋人」「いい母親になる」溺れそうなくらいの甘い言葉を贈られる。アクセル最高じゃん、最高の元彼じゃん!と拳に力が入ったけど、自分に置き換えると過去からの綺麗な贈り物が数年越しに届いた感覚で、目の前が虹色になる程には震えない。あぁそうだ、わたしはこの人のことを人として愛してはいるけど、心を破り散らかされるくらいの猛烈な恋をしていないんだと理解する。わたしもユリアと同じく今しか生きられないんだ。
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