ギルド

コンパートメントNo.6のギルドのレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
3.8
【誰かの人生の一部になりたい憧れとアンビバレント】
■あらすじ
モスクワに留学中のフィンランド人学生ラウラ。彼女の、古代のペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅は、恋人にドタキャンされ、急遽一人旅に。

そんな彼女が寝台列車6号コンパートメントに乗り合わせたのは、モスクワのインテリたちとは正反対の、粗野なロシア人労働者リョーハ。最悪の出会いから始まった、二人の長い旅の行方は……。

■みどころ
ペトログリフを観に行く女性と相乗りになったロシアの男性とのお話。
オリ・マキの人生で最も幸せな日と同様に映像の古臭いザラツイた質感・音楽チョイスが良いです!

この映画では列車という薄くて暗くて排他的な中で相乗りしたリョーハへ不満を抱きながらペトログリフを観に行くロードムービーである。
この薄暗さ・閉鎖的な画作りは「アンナの出会い」的な雰囲気があって好きです。

そんな中で狭い空間の中でラウラとリョーハは共に過ごす時間が長くなり、色々な形で助けたり助けられていく内に少しずつ打ち解けていくのが魅力的でした。
本作が魅力的な映画であるのは題材以上に「空間の」映画を強調するところである。

他者同士が同じ時間を過ごす事で友情を深めるよくある風景に、囲う食卓とか身だしなみとか饗しという形で現れるのがどこか上品だと思う。
そして列車の空間から、停車中の現地でのやり取り・旅先…など狭い空間から広大で自由な空間へ広がっていく。そこに一期一会に留まらない友情が「空間の広さ」という形で転写されていく見せ方が良かったです。

人間の外見で第一印象を決めるものの、その後の振舞・気にかける行動・内面によって印象が変わる…のはよくある内容だと思う。
本作はロードムービーの進行に沿って、列車の中での過ごし方という生き方が露呈する中で関係性の変化と相容れなさを共存する展開を空間で描ききるのが素晴らしかったです。

特に人間関係で起こりがちなLOVEとLIKEの考え方の違いで起こる摩擦と、それでも人間は助け合って生きるけど心の奥底には相容れないものはいるドライだけど温かい優しさがあるこの映画が好きです。

ラストの目的地で楽しむ姿はソナチネみたいな子供ぽさと大人っぽいアンビバレントなバランスを彷彿とさせてて良かったです。
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