いの

コンパートメントNo.6のいののレビュー・感想・評価

コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)
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監督の前作品は、読書で例えるなら読後感が唯一無二。読書中に味わっている感覚と、読後に心に染み渡らせるときとの感覚の相違。凡庸だと思っていたらそれは大いなる勘違いでいつのまにか静かな良作へと昇格しているというような。それはうれしいこと。それはよろこばしいこと。オリマキ君はそんな作品だった。



今作もそうなるといいな。そうなったらうれしいな(まだそうなってない)。まるで自分が列車に乗って旅してるときと同じように私はウトウトしては時折目が覚めた。いつの間にか仲良くなっとるし、いつの間にか○○しちゃってるし、いつの間にか食堂行っちゃってるし、いつの間にか列車から降りちゃってたし。ペトログリフって何なんだ! でもウトウトしてたこと後悔してないし、また観てもそうなっちゃう気がする。いつもガラガラなのに何故か混んでた映画館。それはよろこばしいこと。頭の揺れ具合から前の座席の方もウトウトしてたことがわかる。更にその前の座席の方も同じく。もしかしたらそれもよろこばしいことなのかもしれない。偶然居合わせた観客と同じ体験を分け合うこと。それはこうやって記すことで出来事として心に刻まれる。

他のユーザーの感想・評価

savage

savageの感想・評価

4.3
狭い寝台車で、寒々しいロシアの旅。
同室にはデリカシーのかけらもない粗野な男。
期待してた旅とは程遠く、空回りしながら北極圏へ。
人生の例えにも感じます。

旅をしているうちに、主人公の価値観が明らかに変化していくのが面白かったです。
孤独がテーマでもありまして、その孤独をしっかり受け止め成長したように見えましたね。

撮影が素晴らしく、観ているこちらはその風景を堪能しました。…実際は寒くて大変だろうな。
不便な旅ですが、寝台列車と車内食堂は魅力的。

微妙で複雑な胸の内をかかえた男女2人の繊細な演技がグッド。生々しい演技でした。
寝起きの寝癖がついたリアルな表情がいい。

非常に運命的で面白かったです。同室があの男でなく、毒にも薬にもならない人だったら、空回りのまま旅が終わってた可能性もあるし。
雪の中に凍りついてた目的地も、思うほど感動出来なかったかもですが、その苦労した思い出は忘れないでしょう。
寒いけど、熱いものがこみあげるいい映画でした。
しま

しまの感想・評価

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今よりもずっと旅が難しい時代に、よそ者に優しくない土地を1人で旅する 列車や街や人々はビフォア・サンライズに出てくるそれとはまったく異なっていて、錆びていて、色褪せていて、凍っていて、疲れを感じる 粗野な男との出会いはマジで最悪だったけど、しだいに溶け合うふたりはまさに現実を生きていた、旅をしていた、こういう旅をしたいと思う
大事なところでせりふが無いのが本当に好きだった 感情がむき出し、ってわけでもないけど、2人の言葉にはならない感覚がヒシと伝わってきた、去り際なんてもうヤバイ
Vocalise

Vocaliseの感想・評価

4.2
旅の出会いの顛末
これも一つの正解と
静かに込み上げてくるものがありました
ウクライナ侵攻後の頭で見るとロシアのプロバガンダ映画?と思えてしまう(フィンランド人(ロシアへの憧れ、裏切り者)とロシア人(粗野だが情に厚い)の関係性のメタファー)。
そば茶

そば茶の感想・評価

4.3
ベタな話かな?と思いながら観ていて、そういう一面もあるけど、全く想像を超えているところもいくつもあった。わかりやすいかと思えば、描かれていない余白もたくさんあり、すごくいいバランスで成り立っている映画だなと思った。

旅と人生は似ていると言われている場面もよくみるけれど、この映画はまさしくそういった内容だった。

苦しい時に観ると救われる人も多そうな映画。よかった。

最近忙しくて観たい映画はたくさんあるのに全然観れていなかったけど、改めて映画の楽しさを実感した。

どうでもいいけど、上映前のマスク着用などのコロナ対策の注意喚起動画がなくなっていて、コロナ禍でたくさん映画を観るようになった自分としては、ちょっぴり寂しい。
muninn

muninnの感想・評価

3.6
他者との出会いを通して内なる自分と対峙する。劇中の風景は極寒の雪景色がほとんどだが、それとは対照的に時間が経つにつれてラウラとリョーハとの関係はじんわりと熱を帯びていくような、そんな作品。
Mak

Makの感想・評価

3.4
フィンランド出身の女性が彼女と離れて1人旅を電車でするのだが、最初は笑顔もなく、彼女と離れて寂しいけど、同じコンパートメントのロシア男性と交流していく中で、自分を知り、ロシア男性との楽しい時間を楽しみ、最後は笑顔になる映画。
斎藤耕一監督の「約束」にいろいろ似てました。
「約束」はワケアリ女、岸惠子とお調子者のショーケンが列車で乗り合わせるお話で、たいへんな傑作です。
todo

todoの感想・評価

3.6

このレビューはネタバレを含みます

幸せは人間関係で決まると言いますが、
選り好みをせず色々な人と関わって、
自分自身が好ましい”雰囲気”を見つけていきたい、そう思える映画でした。

ラウラはイリーナに恋をしたのではなく、
イリーナが作る雰囲気の一部になりたかったと本人が語ってました。
ただ実はそこに息苦しさを感じていて、
“ここじゃない感”をなんとなく感じている。

1人で行くことになったムルマンスク、
そこで出会ったリョーハ。
リョーハはラウラが今まで自分が描いていた自分の雰囲気とは真逆をいく男。

ただなんだかんだ彼と時間を過ごす中で、
次第に恋に落ちていく。

この恋は、ラウラ自身が新たな経験や体験を通して、彼女自身の描く理想の雰囲気が鮮明になったが故に始まった恋だと思います。

こうやってみると恋に恋してるみたいにな感じですが、作中にあったセリフの様に、
“女性は強い、自分自身の中で自分の幸せを描いている、それに従いなさい”というセリフを踏まえると、ラウラ自身が新たな一歩を踏み出したとも言える思います。

ラストシーンでは連絡先を知らないままリョーハと別れますが、彼が残したメッセージ
”くそったれ”を読んで吹き出し、
前向きに人生を歩んでいく描写になります。
(フィンランド語、彼は愛してるという言葉と勘違いしている。ラウラが間違って教えた)

リョーハとの恋も進展しないかもしれないけど、それも糧にポジティブに進んでいく姿が、爽やかで気持ちが良かったです。

終盤までは陰鬱な雰囲気が漂う演出で、
ラウラの心情を本当に上手く表現しているなと感じました。
ラストシーン含めた光の使い方が感銘を受けました。
むっつり顔のラウラが 最後に最高の笑顔を見せてくれた!

吹雪の中、ほんのりと、しっかりと、伝わってくる暖かさ。
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いのさんが書いた他の作品のレビュー

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4.2

このレビューはネタバレを含みます

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〈いの鑑賞作品/ただし*は未鑑賞〉
1966年『続・荒野の用心棒』・・・DJANGO
1966年『真昼の用心棒』
1966年『ガンマン無頼』←←ココ
(1967年『キャメロット』*未鑑賞)
1968年
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