「猟奇犯による残酷な犯罪」という設定、およびその描写には思い切りの良さが感じられるものの、本作の半年前に公開され成功を収めた『チェイサー』と比べてしまうと、どうしても見劣りする作品。
もしかすると「ナ・ホンジンに続け」とばかりに、強行軍で撮ったのかもとすら思った。
最も嫌いなのはラストシーンで、私なら「今際の際の幻影」か「刑務所内で見た夢」とはっきり印象付けるカットを付け加えただろうなと、勝手にイライラ。
この時期の韓国映画が「違う曲がり角」を選んでいれば、以降15年の後続作品に、あれほど「お涙頂戴の家族愛」や「幼稚なご都合主義」が蔓延しなかったのではと思う(加えて言うなら、主人公の娘は口うるさいだけで、『チェイサー』に登場する少女キャラのような魅力がない)。
また主人公に比べ、猟奇殺人犯の過去にまつわるエピソード描写が雑なせいで、終盤の惨劇への没入度が著しく低下した。
重層で二転三転するロードムービーの中盤までは面白かっただけに、もったいない。
「それにしてもチン・グって、作品に恵まれていないなぁ」と思ってしまう。
素材は良いし、本作で滲ませた狂気も新鮮なのに、現在は『チェイサー』の猟奇犯役で躍進したハ・ジョンウに、大きく水を開けられている。
この時期に多少の失敗作があっても上昇気流に乗り続けたユ・ヘジンだけは、「実力と個性があれば、数多の美男よりブ男のほうが重宝」という真理を証明した。
音楽は◎、特にエンドロールで流れる打ち込み+トランペットのテーマ曲は印象に残る。