たぶ

崖上のスパイのたぶのレビュー・感想・評価

崖上のスパイ(2021年製作の映画)
3.0
張芸謀ファンなので、当然期待はするのだが、昨今の彼の作品は期待に及ばないことが多いのも正直なところなので、この作品も期待しすぎない程度に冷静に観賞したつもり、しかしやはり期待には及ばず。

舞台設定が、中国、ロシア、日本が絡む満州国ということで、ロシア語ロシア人、日本語日本人も多く絡んでくるのかと思いきや、ほぼ中国人で完結だった。もうちょい世界を股にかけるスパイという感じで国際感を出してほしかった。

でもロシアな風格も混じったハルビンの街は雰囲気あって良かった。
雪化粧をした街で黒服の人間たちの色のコントラスト、この白黒はきっと監督のこだわりポイントなんでしょう。
色使いの演出で定評のある監督なので、この白黒のキャンバスを用意して、何か途中途中で彩度の高い色をバシッと効果的に挟むんでしょきっと。と思っていたが、たまに雪上に赤い血が流れるが色彩演出とは言えないほどちょっとだけの赤。
なんか大胆な赤とか、澄みきった青空とか、炎上する赤い炎とか、なんか色欲しかった。
記事で読んだが、監督がこのハルビンの街セットでこだわったのは、電線を実際よりも低めに設置して雪で重く垂れ下がる感じにして、華やかではなくもの悲しさを強調させたらしい。確かに街ならネオンとかキラキラしてそうだが、かなり色彩は抑えめだった。

ストーリー的には、皆さんのレビューにあるように、人物相関図を事前に予習しておけばある程度追えるが、展開の中で、それぞれの人物がどっち側の思惑の下に行動しているのか、整理しながらストーリーを追うのはたいへん。

そして結局は重要人物の救出というウートラ計画の目的はどうでもよくなっちゃった感が否めない。
アジアシネマ前で物乞いする幼い姉弟はまったくどうでもいい扱い。スパイ夫婦の思いが伝わってこない。

小蘭(刘浩存)は声が可愛すぎるというか幼すぎて、スパイなんかやらせる年齢じゃないでしょと思わせてしまうのがマイナス。作戦上幼い女の子が必要なら納得だが、そうでもなさそうだし。

ハルビンの路地で時々真上からのショットで、雪の白い道を黒い人が走ってチェイスするカットがあるがこれはカッコいい。

「崖上のスパイ」の邦題は「がいじょうのスパイ」と読むのね。私は「クリフウォーカー」という認識でずっと覚えていたので、いざ映画館のチケットカウンターでチケットを求めるときに、そういえば邦題ってなんて読むんだっけ?とあたふたしてしまった。原題の「悬崖之上」も思い出したが、「がいじょう」が出てこず「崖の…崖の上…」と「ポニョ」と言ってしまいそうで恥ずかしかった。

映画のパンフレット(900円)買ったけど、張芸謀監督のインタビュー無しかよ。
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