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崖上のスパイのオタクのネタバレレビュー・内容・結末

崖上のスパイ(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

抗日ものではなかった。中国の歴史上どうしてもこの時代の悪役として日本の名が挙がるのは仕方のないこと。内容としては日本の731部隊の非人道的実験の告発を目的に施設から脱出した人の出国を助けるお話……(で合ってるよね?)2020年時の情報ではそう書いてあるのを何かで読んだけど、映画の中では詳しい説明はなかった。舞台が1934年で731部隊の施設はまだ無いはずなのでそのため名前が出なかったという事だろうけど、ハルビンにある日本軍の非人道的実験施設と言うと731部隊の実験施設でしかないので史実との整合性をとるために年代をもう少し後にしても別に差し支えなかったんじゃないかな?と思った。この辺詳しくないけど敢えてそうしたのかな?あくまで架空のお話だから?
パンフレット買いそびれてしまいそちらはまだ見ていないのだけど、そこで何か説明があるのだろうか?他の方のレビューに満州事変後の歴史を勉強して観た方がいいとあったけど確かにその通りと思う。最近は731部隊と言われてもピンとこない人も多いだろうし日本語字幕版だけでも何か説明あってもいいなと思った。歴史の教科書で確かに見たけど忘れかけてたし。自分が中国人だったら知らずに観て面白スパイ映画と思う日本人見たらなんだかな、となるだろうなぁ。きっとそういう人はそもそもこの映画に興味わかないと思うけど。冒頭の説明で抗日映画か警戒したというレビューを見かけたけどそれはさすがにアレルギー反応強すぎると思う。
満洲国が舞台なのに日本人が1人も出てこないところには国際市場に対する配慮を感じる。輸出して日本にも売らなきゃだし。日本人が登場しないからこその面白さな気がするし、本当のところはただノイズになるからというだけだと思うけど。
プロパガンダの方向性としては、抗日より共産党万歳だった。

どちらの陣営も中国人だからなのか、間抜けな日本軍みたいな演出はなく特務警察も勘の良い手強い相手として描かれていて、緊張感があって良かった。特に小蘭とは対極な雰囲気の小孟が有能でかっこいい。
アクションに派手さはなく映像は綺麗なのに話は地味で暗くて無骨な感じがマシューヴォーンのキングスマンとかガイリチのアンクルのような"俺の考える最強のスパイ映画"のイーモウ版なのかな。お洒落なスパイたちが最新のガジェットを使いこなしスマートにミッションをこなしていくというよりはアナログ重視で大義のために奔走する感じ。007やMIPシリーズとは違ったスパイ観で楽しめた。
拷問は直接の映像はないのに凄惨さが伝わる。観客から見て主人公側があんなに執拗に痛めつけられるってあんまり見ないかも。逃げだせたと思ったらなかなか上手くいかなくて、結局連れ戻されて、生かされて……。
楚良は周乙に向けて撃ったとき、撃針が抜かれていたことは知っていたのだろうか。
映画のラストで小蘭の周乙の呼び方が"周乙大哥"になってるのとか王郁が生き残って子供たちと再会できたのもフィクションならではの演出だなぁ。きっと本国のガイドラインなどあるのだろうなと思った。
綺麗にオチがついていたのもそれはそれで良かった。娯楽だし。

私は人の見分けが付かないというのは無かったけど、おそらく周乙と鲁明の見分けが付かないのかな?この2人の見分けがつけばあとは大体わかるような気がする。目元よりほうれい線や口元に注目すると見分けつく。
満鉄のセットとか、ハルビンの街並みとかセットも見応えがある。衣装が同じような色味で統一されてるのも白い雪の景色とのコントラストが美しいし、誰がどれだかみたいなのを頑張って判別するのも結構楽しい。

それと周乙大哥めちゃくちゃ頑張っててかっこいい。
拳銃を返却され感謝して楚良の拳銃のネタバラシをされ高科長を抱きしめるシーンで、表向き高科長に対する命を救われたことへの感謝に嘲笑みたいなものが混ざった皮肉な表情を浮かべるところがとてもよかった。観客だけがわかる表情。
あらすじではスパイが4人だけのような書き方のものも多いけど、1番スパイしているのは周乙大哥だった。
最終的にスパイはバレてんだかそうでないんだか(たぶんバレてる)スパイ疑惑が払拭されていなければ金志徳の家族に弔意を……とはならない気もするけど。
2もあるようなのでそこでまた周乙大哥はスパイとして活躍するのかな?そちらも日本公開があるかわからないけど(まずは検閲をクリアしなければ……)楽しみ。

……
とてもハマってしまい色々見ていくうちに10年ほど前に「悬崖」という周乙とその家族が登場する全40話のドラマがあり、今回の崖上のスパイはその前日譚らしい事がわかった。
中国のドラマで見る手立てがないのだが、概要だけはなんとなく分かった。
続編はやはりドラマ版のリメイクになるのだろうか、早く次を観たい。
そして上映終了前にパンフレットも購入できたのだが、これがとても素晴らしい内容と装丁だった。1度目は読まずに、2度目は読んでから観たけど事前に読み込んでから観たらより楽しめたかも。作中にあったようにちゃんとカバーがついていて、そこもとても良かった
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