このレビューはネタバレを含みます
極寒の土地でのサバイバルも、サイコパス夫の凶行も、死体の処理に困る話も、映画ではよくある題材だが、それを良いところ取りして混ぜ合わせるとこんなに面白い逸品ができるという好例。ジャンル映画を作る際の教材として使えるレベルだろう。余計なものをほとんど追加せず、しかし、ちゃんと実在感のあるキャラを出して、最後までダレさせずに90分台でまとめてあるのは見事としか言いようがない。
手際のいい序盤の描写で、主人公の性格と置かれている状況をサラッと描いて、本題が始まってからはノンストップで、どんどんピンチが訪れる。雪上の屋敷から、外の倉庫、車、地下室にいたるまでの場所の使い方、死体処理の話から対人のバトルにシフトしていく脚本も実に上手い。
オーソドックスをきっちりやって、少しだけ奇をてらって、最後はまた王道に戻るというツボを押さえている。ミーガン・フォックスはじめ各キャストの演技も実在感があって素晴らしかった。また、クライマックスの「過去に囚われて、女性を支配、屈服させようとし、同じ世界に引きずり込もうとする男」とそれに対峙して未来に進もうとする女性という構図をきっちりと絵にして見せている演出も忘れがたい。
B級映画と舐められそうなパッケージだが、矛盾もなく過不足なくドラマとスリラーを描いた傑作……と敢えて呼びたい。ヒットは難しいだろうが……。
