うめまつ

リバー・ランズ・スルー・イットのうめまつのレビュー・感想・評価

4.2
本を閉じた後も物語の余韻に浸れる、上質な書物を読み終えたような気分。兄弟愛もの(姉妹愛も含む)に弱いので図らずも有意義な時間だった。子供時代の二人はもう単純にめちゃくちゃ可愛い。ジョセフがまんまミニジョセフで、10歳にして既に世界の不条理に困ってそうな顔してる。このまま成長して大人のジョセフが出てくれば良いのに。。

なんて戯言を一瞬で吹き飛ばすのは、朝日が反射する川面に負けないくらいキラキラと煌めく、ブラッドピッド(全盛期)の破壊力。無防備過ぎる笑顔!濡れる黄金の髪!空を映した両の瞳!最早その輝きは暴力と化して襲ってくる。眩しくて眩しくて目が潰れたので3回くらい眼球を交換した。神様の寵愛を受けた完璧な美の大盤振る舞い。ご馳走様です。特にお母さんを抱き上げてくるくる回すとこにときめいた。大人になった美形の息子にあんな事されたら飛び上がるくらい嬉しいだろうな。いや美形じゃなくても嬉しいだろうけど。

作品自体がまさに《奔放な弟に憧れるも、はみ出せない真面目なお兄さん》のような保守的な雰囲気ながら、最後にはその地味だけれど丹念に積み重ねてきた徳のようなものがジワジワと染み出して、信頼と尊敬に近い感銘を受けた。余計な装飾や演出は皆無なのに、隅々まで真っ当な誠実さに包まれていて、過不足のない豊かさに満ちている。淀みなく流れる川のせせらぎ、投げ込まれるワイヤーの美しい軌跡、飛び跳ねる魚と光る水飛沫。情景で、音で、佇まいで、フライフィッシングは自然を相手にした芸術だと雄弁に物語る。その場所に吹く風の匂いを感じられる映画が私は好きだ。
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