さめむね

戦場のピアニストのさめむねのネタバレレビュー・内容・結末

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

午前10時の映画祭にて2回鑑賞。
最初に観た時の衝撃たるや。その日丸一日この作品について考え尽くしてしまった。

戦争映画、ナチスドイツ、ユダヤ…とテーマ的にみても作品として最高の出来である。
これらのテーマをより印象づける演出に脱帽した。例えば対比。ポーランド侵攻前の町の様子と、ナチスドイツ占領下の町の様子。初めのシュピルマン家の食事と、ゲットーでの食事と、強制収容所へ行く前のキャラメル。どれも同じ場所、同じ家族のシーンだが状況はまったく異なっている。この対比が、ただただ悲惨になっていく様子をより生々しく、現実的な描写として演出していた。
主演のエイドリアン・ブロディの演技もすざましい。彼だからこそこの作品がここまで素晴らしいものになったと思う。

〜内容について〜
どのシーンに対しても言いたいことはあるのだが、全体的にシュピルマンについて。
彼は死なせてはならない人として、たくさんの人に助けられ生き延びた。
強制収容所へ向かう列車へ乗り込むのを止められるシーンと、ワルシャワ蜂起から1人で必死に生き足掻くシーン。多分どこかで、自分は生き延びなくてはならないことを悟ったのだろう。

〜大尉とのやり取りについて〜
よく言われる字幕問題は残念だが、そこを気にしなければどこまでも胸に響くやり取り。ピアノから感じるシュピルマンの今までの壮絶さ、想い、感情、全てが溢れ出ていた。これを聴いた大尉は何を思ったのだろうか。
大尉とのやり取りは作品全体で見ると時間的にも会話量的にも短いのだが、内容の濃さは凄い。大尉にも家族がいること、ナチス側にも残虐ではない人がいること。彼らもまた、戦争の被害者であること。
単なるアンチナチスな映画ではないことに気付く、見方が変わる大切な大切なシーンである。



私はこの作品を高校生の内に知ることができて本当に良かったと思う。歴史を知ることの大切さを改めて考えさせられた。

どうかこの作品を観た後に、そこで終わらず、この映画、ひいてはホロコーストについて調べて見てほしい。
この映画がフィクションの世界では無いこと。人間が冒したこと。それらは遠い昔のことではないこと。
特に最後、ポーランド侵攻は1939年に起こった、78年前の出来事である。終戦からは72年しか経っていない。私はつくづく最近まで日本も戦争をしていたことにヒヤリとする。
あと是非知ってほしいのが、ホーゼンフェルト大尉について。より戦争のやるせなさを感じさせられた。

私はまだまだ知らなくてはいけないことが多い立場だと気付かせてくれた、大切な映画です。
思い入れ、評価、ともにずっと私の人生の1番の映画でしょう。
いつかポーランドを訪れたいと思います。
さめむね

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