やわらか

戦場のピアニストのやわらかのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.2
観る前はもっと軽めの楽しい映画だと思っていたんだけど、始まったらいきなりずっと深刻で「あれ?」と思ったら「海の上のピアニスト」とごっちゃになっていた(--; あとこれ、実話だと知らんかったのでそれも最後にびっくりした。
 
ナチスドイツ占領下のワルシャワに生きたユダヤ人ピアニストのお話。1939年のポーランド侵攻後の街で迫害され、次々の命を奪われて行くユダヤ人たちと破壊されて行く街の姿。ほんとうに一かけらも笑う要素なんてなかったかもしれない。
 
「ある日自分の住む街が占領される」ということについて、例えば終戦前後の沖縄の状況などを知ると悲しかったり悔しかったりするし、一方で戦中の中国や朝鮮半島、東南アジア諸国での日本軍の振る舞いを映画で観ると申し訳ない気持ちになり、いずれも当事者に寄った感情が入ってしまう。
 
それに対し、この映画で描かれるワルシャワという街との関係においては第三者的な感覚で見ることができる。その分、あらためてその状況の恐ろしさにおののく。変わることがないと感じていた日常が脆く壊れて行く姿に恐怖を感じたり無力感を感じたり。
 
ただ、とても長い映画の中で決して多くはないけれど、音楽が鳴るシーンがあり、そこで響くピアノやチェロの深い音色が、ギリギリのところで命を繋ぐ水滴のように感じる。一番心に残ったのは、廃墟と化したワルシャワの街と最後のオケのシーン。二つのシーンは対照的でそれらが対になって余韻を生んでいる。
 
唯一気になったのが、台詞が全部英語だったこと。英語だからヒットした、というところはあるんだけど、やっぱり違和感が。できればポーランド語の吹き替えとかで観たいな。(もちろんポーランド語理解できないけど)
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