つのつの

戦場のピアニストのつのつののレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
3.9
反撥、テナントと一人の人間が(おそらくは勝手に抱いてる)社会からの疎外感故に精神的に崩壊していくホラーを撮り続けてきたポランスキー。
その集大成とも言える本作では、ついにその悪夢は現実のものとなる。
1939年。
ピアニストである主人公は、ユダヤ人というだけでゲットーに強制移住させられ、運良く逃げ出したかと思えば砲撃によって廃墟と化したワルシャワで鼠のような暮らしを余儀なくされる。
家族とは生き別れ、知人は虫けらのようにぶち殺されていく(本作の即物的な暴力描写はかなり凶悪)。
その中で精神的にも肉体的にも限界に辿り着く主人公が荒廃したワルシャワを見つめるポスターアートのシーンの絶望といったらない。

その彼を狂気に至るギリギリのラインで留めておいたものが音楽だったのだ。
ライムスター宇多丸氏は「自分を幸福にする術を知っておいたほうがいい」と言ったが、まさに主人公はピアノを弾くことが自分にとって幸福だと知っていたからこそ凄まじい絶望の中を生き抜けたのだろうか。
そしてこんな作品を作ったポランスキーの実人生を考えずにはいられなくなる。
つのつの

つのつの