オトマイム

戦場のピアニストのオトマイムのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.2
実在したひとりのユダヤ系ポーランド人ピアニストの視点を通し、ナチスによるユダヤ狩りの惨状が抑揚を抑えたトーンで描かれる。2時間半の尺を全くダレずにみせる力量は流石ですね。

収容所行きの人混みの中、キャラメルを高値で売りつけるユダヤ人の少年。お金を手にしてももう使う事などないのに。その一粒を家族で切り分けて食べるシーンが哀しくてすごく印象に残っている。
また、隠れ家にあるピアノの蓋をそっと開き愛しむようにエアーで演奏する彼を観るだけでも戦争の終焉を強く願わずにいられない。

廃墟となったワルシャワでの奇跡的な出来事。その圧倒的な美しさに心震えた。音楽は、芸術は心を動かす。数あるホロコーストの作品中でも屈指の名シーンではないでしょうか。


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デビュー作『水の中のナイフ』を撮った直後に共産主義体制のポーランドに見切りをつけさっさと国外に拠点を移してしまったポランスキー監督。彼が40年振りに祖国に戻り制作したのがこの傑作であることは感慨深い。
自らの出自と向き合い自国の悲痛な歴史を描いた、力強く繊細な作品。見当違いかもしれないけれど故郷に充分な恩返しをしたような、そんな気持ちなのかも知れないと思う。