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戦場のピアニストのRのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.7
めちゃめちゃ久しぶりに4回目見てみた。ひどい風邪をひいてるときに見る映画じゃなかった…しんどすぎてグッタリ。だが、やっぱ素晴らしかった。冒頭、主人公のピアニスト、ウワディフシュピルマンが生のラジオ放送で美しく弾いているショパンのノクターンが、爆音によって中断される。1939年、ナチスドイツによるポーランド侵攻である。序盤は、ワルシャワでふつうに暮らしてたシュピルマン一家を通して、そんな大したことにならないだろうと思ってたユダヤ人弾圧が、あれよあれよととんでもなく恐ろしい状態に激化していくプロセスが描かれる。金品の没収に始まり、ダビデの星の腕章着用の義務化、暴力による支配、ゲットーへの移住……平穏な中流階級の生活が、いままで大切に培ってきた幸せが、あっという間にあっけなく破壊されていく理不尽さへの悲しみ、怒り、絶望、諦め、そして先の見えない不安。やがて、ゲットーでは、食料が得られなくなり、ふつうに殺戮が行われるようになり、道端にゴロゴロ死体が転がるようになる。気づけば地獄絵図。そして、ユダヤ人絶滅作戦が行われることになる、強制収容所行きの電車に、一家が乗り込もうとする! まさにそのとき! 友人の助けでウワディフだけがそこから逃げ出すのだ! 収容所内の様子は本作には出てこないので、見たことない人は、是非とも、本作を見る前にyoutubeなどでアウシュビッツなどの記録映像を見ることをお勧めします。この電車シーンの凄み、その運命の別れ道の意味の重みをよくよく理解するために。で、こっからはウワディフが、逃げる、助けられる、戦争を覗き見る、逃げる、隠れる、覗く、逃げる、逃げる、それだけが延々と続きます。一緒に見てた友だちが、スピルバーグの宇宙戦争に似てるなぁ、と言ってて、その通りやなぁと思った。まったく何の活躍もすることなく。無力で。ただ生き残るためだけに。ひたすらに逃げる。それが生き残ったユダヤ人にとっての戦争の現実なのだろう。しかもかなりたくさんある場面が暗転しながら延々とつながっていくだけなので、途中めちゃくちゃ長く感じる。が、それもユダヤ人が実際に感じていた戦争の長さとは比べものにならないだろう。で、長い長い時間が経ったあとの、あの地平線まで見えるおそろしい街並み。なんてことだ。戦慄するしかない。そして、それがすさまじいクライマックスへと繋がっていく。おもしろいのは、ピアニストってタイトルな割に、ピアノを弾くシーンがほとんどないこと。いっぱいピアノ音楽を楽しめると思った人は面食らうことでしょう。でも、だからこその……なんだよね。あと、見てて感じたのは、人間の生存本能、生命力、そして、運について。人間って、人生って、生命って何なんだろうか。同じ人間が残忍さと慈悲の両極端を状況状況で見せるのもわけわからんし。けど、何より強く感じたのは、確固たる信念を持つってほんとに大事だなってこと。たとえそれによって命を奪われることになったとしても。ナチスみたいなもんに加担してしまった人生って、どう考えても、その後の自分の一生と折り合いがつけれるわけがない。同様に、戦争に加担して命を落とした人よりも、戦争に反対し人を助けるために殺されていった人たちの方が、断然意味のある死に思える。おっと、話は逸れましたが、戦争映画なのに撮影エレガントやし、陰影に富んだ映像も美しく、主演エイドリアンブロディの困り眉も一度見たら忘れられぬ印象深さ。数々の小中大傑作を生み出してきたポランスキーが命をかけた入魂の最大傑作! すごい! けど! だからこそ! とにかくしんどいわ!今後は体力があるときに見るようにしましょう笑