たけちゃん

戦場のピアニストのたけちゃんのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.5
生きるも死ぬも神のご意思だ!


ロマン・ポランスキー監督 2002年製作
主演エイドリアン・ブロディ


シリーズ「名作映画で振り返る第二次世界大戦」
第5弾は「戦場のピアニスト」です。

実は未見でした。
2002年って、いわゆる子育て期で、特に戦争映画なんかはスルーでしたね(ง  ˙ᵕ˙ )╯ハッハッハ!!


あと、ロマン・ポランスキー監督の作品がねぇ……。
どうも苦手で(*´▽`)ノノヘヘヘ
それは作品に対して、というより、ロマン・ポランスキーの私生活に対してあまり良い印象がなくて、避けていました。
僕は、俳優に対してもそうなんですけど、私生活が乱れている人や性にだらしない人、ダメなんですよね。作品と製作者の人格は別物とは分かっているけど、どうしても、ね。
あと、本人が悪いわけではないけれど、シャロン・テート事件(シャロン・テートが亡くなったのは1969年8月9日、つい先日が命日でした)の風聞や少女への淫行容疑など、ちょっと看過できなくて。

それもあって、この作品もスルーしてたんです。
でも、今回は観ることにしました。




さて、映画です。
まいりました。
素晴らしい映画でした。
ほんと、先入観って、目を曇らせるよね。

調べると、ロマン・ポランスキー自身がユダヤ系ポーランド人で、幼児期には、この映画さながらに、ワルシャワのゲットーに入れられ、母親はアウシュヴィッツで亡くなり、父親と彼は、辛くも生き残ったんだそうです。
ある時のインタビューで、ポランスキー監督が墓場まで持って行く作品は?と問われた際は「戦場のピアニスト」を上げていたそうですが、今作を観たらそれも納得です。彼にしか撮れない作品でした( ˘ ˘ )ウンウン

また、この映画の原作はウワディスワフ・シュピルマンの手記であり、実話に基づく作品です。ホロコーストを描いたものは、いつも苦しくて、なかなか腰が上がりませんが(そういう方、多いでしょ?)、これはラストのエピソードも含め、ぜひ、観て欲しいと思いました!



時は、1939年。
第二次世界大戦開戦前。
舞台はポーランドのワルシャワ。
主人公はユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン。
実際の彼は、若くしてショパン音楽院でピアノを学び、20歳の頃にはベルリン音楽大学で学んだようです。
しかし、ドイツがヒトラー政権になりポーランドへ帰国。ポーランド放送でピアニストをしていた頃、戦争が始まるのでした。
映画もここから始まります。


映画を観ていると感じましたが、割と平穏な日々を過ごしていたのに、あっという間に戦局が変わり、虐げられた生活になって行ったのが分かります。
お父さんとか、割と前向きで、なんとかなるさと思っていましたよね。きっと、第一次世界大戦の記憶などがそう思わせたんだよね。だから、1939年当時は、イギリス、フランスの参戦もあり、きっと大丈夫と思っていたんですね。

でも、まさかのドイツのポーランド侵攻。いわゆる電撃戦で、あっという間にフランスまで降伏、占領されるとは夢にも思わなかったのでしょう。
その後のユダヤ人が辿る道は、ここで繰り返さなくともよいですね。


映画は、そのユダヤ人の生活がどう変わっていったのか、市民的立場から描いていくので、本当に我がことのように伝わってきて、これは身に詰まります。

そして、主人公のエイドリアン・ブロディが素晴らしいんです。これはアカデミー賞主演男優賞も納得です。
エイドリアン・ブロディ自身がポーランド系ユダヤ人の家系ですし、彼もまた、演技を通して、自らの出自を再確認していたんじゃないかなぁ。彼の両親がホロコーストを生き延びた方たちなので。
特に、迫害が酷くなり、逃亡していた時期は、ガリガリになっていて、演技とは思えませんでした。
よく生きのびましたよね。

そして、今作の裏主人公が、最後に出てくるドイツ将校、ヴィルム・ホーゼンフェルトです。
もちろん、彼も実在の人物ですが、調べてみると、映画で描かれていた以上の人物で、ドイツ将校にも関わらず、迫害されていたポーランド人を支援したのだそう。その中の1人がシュピルマンでした。

しかし、その後、ソ連軍の捕虜となり、最後はスターリングラードの戦犯捕虜収容所で亡くなったそうです。1952年のことでした。
戦時下で彼に助けられた人々は、なんとか彼の釈放を願ったのだそうですが、叶わなかったようです。
本当に人の運命って、残酷。
生きるも死ぬも神の意思なのか?
でも、ホーゼンフェルト大尉に出会わなければ……
出会ったのがホーゼンフェルト大尉じゃなければ……
死んでいたのはシュピルマンでした……。



ピアニストの映画なので、たくさんのクラシックが流れます。
でも、申し訳ないことにクラシックは門外漢で、特に、ピアノは疎い。
今作は、シュピルマンがショパン音楽院で学んだからなのか、ショパンが多かったですね。ピアノの素養のある人なら、もっと気持ちが入ったかもねぇ。
ゴメンなさい、音ネタはなしです(笑)

でも、ホーゼンフェルト大尉が弾くベートーヴェンの「月光」は素晴らしかった。その時のピアノの音は、シュピルマンにはどう響いたのか……。



ホーゼンフェルト大尉がシュピルマンに残したものと、瓦礫の山となったワルシャワ。なんとも胸に響く作品でした。
これはぜひ、ご鑑賞を( •̀ω•́ )و✧