タケオ

ロード・オブ・モンスターズ 地上最大の決戦のタケオのレビュー・感想・評価

2.3
- 雑で薄っぺらいドラマもここまでくると天晴れだ!『ロード・オブ・モンスターズ 地上最大の決戦』(21年)-

 みんな大好き『ゴジラvsコング』(21年)の公開に合わせて制作された、B級映画プロダクション「アサイラム」の名物「モックバスター映画(※ブロックバスター映画が公開されるたびに制作されている低予算パチモン作品のこと)」の最新作である。「アサイラム」は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19年)が公開された際にも『ロード・オブ・モンスターズ』(19年)という作品を制作しているが、本作との関係は全くないためご安心を(そもそも邦題が同じなだけで、原題も別物である)。
 「モックバスター映画」に限らず低予算のB級モンスター映画の大半は、CG制作費をケチるために「(誰も求めていない)人間ドラマ」を不必要なまでに投入して尺を稼ぐのが常套手段となっており、もちろん本作とて全く例外ではない。巨大モンスターが暴れる場面は最小限に留められ、「(誰も求めていない)人間ドラマ」がこれでもかと語られていく鈍重なストーリー運びには辟易とさせられた。しかし、本作の「(誰も求めていない)人間ドラマ」の在り方はある意味特筆に値するものかもしれない。というのも、語られるドラマの量が明らかに異常なのである。いくら尺稼ぎが必要だったとはいえ、たった88分の間に「巨大モンスターのバトル」「国境を越えた科学者同士の友情」「地球外生命体の脅威」「モンスターと人間の種族を越えた絆」「上層部と現場の軋轢」「父と子の確執」、ひいては「スタートレックの偉大さ」まで語られるのだから恐れ入る。思わず度肝を抜かれた。そして、いずれもその全てのドラマがしっかりと'雑'で'薄っぺらい'あたりは流石「アサイラム」。もっとも、この手の作品に良質な人間ドラマなど端から求めていないわけだが、ここまで'雑'で'薄っぺらい'ドラマをぎゅうぎゅうに詰め込まれると逆に天晴れだ。
 とにかく退屈な作品である。以前酷評してしまったとはいえ、本作を鑑賞したことで『ゴジラvsコング』がいかに良くできた作品であるかを痛感できたのは、なかなか大きな収穫だといえるかもしれない。とはいえ、良くも悪くも「アサイラム」らしさが光る微笑ましい作品であることは間違いない。「うわ、なんじゃこりゃ!」とツッコみながら、ビール片手にゲラゲラと鑑賞するにはピッタリな1本だろう。結局のところ、なんだかんだでやはり「モックバスター映画」は嫌いにはなれないのである。
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