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くじらびとのsimpsonsのレビュー・感想・評価

くじらびと(2021年製作の映画)
4.2
鯨が好きで観に行った。
日本にいると忙しすぎて、一旦リセットするために、そして日本の寒さから逃れるために行っていたのがインドネシアの海だった。彼らの人間も自然と調和するハーモニーを大切にしている気持ちが大好きで心地良くて。日本も忘れてしまったけどアニミズムと共通するところがあると思う。
コロナになってから全然海外へ行けなくなり、最近恋しく思っていたところ‥
映画で観れた!!
しかもめちゃくちゃ美しい!!
そう、このディープブルー。
息を飲む美しさがそのまま映し出されていると思ったら、監督は写真家さんでもあった。
マンタやクジラがあんな小さな木舟で、人間の手によって捉えられるなんて!!
ただただ感動

魚オタク(鯨大好き)と友達になってから、自分はなんて魚を知らないんだろうと気づいた。(鯨肉を食べに連れて行ってもらいめちゃくちゃ美味しかった)
食卓に上がる魚は既に捌かれていて元の姿を知らない。農作物にしてもスーパーには年中同じものが並び、自分の口の中に入る食べ物がどんな形をしてどこにいていつどの様に生育しているのか、都会にいると知らないのだ。生き物を口にしているのに。

この映画を観て、人は生き物に生かされていることを目の当たりにする。
鯨が最後まで必死に生きようともがき苦しんでいる様子が印象的だった。血で海が真っ赤に染まるなんて。

鯨が年間10頭獲れれば村人全員が暮らしていける。捕鯨肉の分配が決まっていたり、夫婦喧嘩したときは漁に出てはいけない掟とか、昔からの言い伝えがある。村の誰かが亡くなれば共に悲しみ、皆んなで協力しながら生きている。
それだけ生き物相手の仕事は厳しく命懸けだ。
村人にとって鯨は支配する対象ではなく、対等に対峙し、尊くもあり畏怖する存在だ。
「バリ島ではお金を稼げた。でもお金に追われる生活が嫌になったんだ」
人新世の資本論を思った。
お金中心の生活をしなくても、家賃なんて無ければ、鯨肉とバナナやお米を交換すれば生きていける。
生きていく上で必要な分だけ自然の恵みを頂き、感謝する。
行き過ぎた資本主義経済は地球の調和を乱してしまった。

30年前から村人と信頼関係を築き、3年間密着して撮り続けた監督の忍耐力に脱帽
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